ふる

★4つ。

今まで読んだ西加奈子さんの小説は
登場人物がかなり個性的、

現実にはなかなかいないだろう、
という強烈なインパクトの持ち主たち。
(そんな人々でも、どこかほんの少し
自分や周りの人々に似ているところがある気にさせられるんだけど)

『ふる』の花しす(かしす)は、不思議なものが見える人。

西加奈子さんが書きたかったという
“いのち”にほかの人より近い人。
だから自分とは明らかにちがうんだけど、
彼女の人との関わり方は、こんな人いるかも…
というか自分もこんなところあるかも、という印象を受ける。

場の空気をなごませたくて、
自らを“オチ”にしようとする花しす。

天然、なごむ、と言われる自分に満足し、
その場の空気をやわらかいものにすることに全力を注ぐ花しす。

だから、大切な人にも一歩踏み込まず
そっと見守るのがよいのだと考え、
そんな自分を「優しい」と言われることに違和感を覚える花しす。

近い、気がする。分かる、気がする。

『ふる』は、やさしい話だ。
人は皆、最初から祝福されている、という話。

小説全体を通して、
不完全でつまずいてばかりの人々を見守る
大きな“何か”の底なしの優しさ、という、
『さくら』で感じたことをこの小説でも感じた。

同居の猫たちと
花しすにだけ見えていた、ふわふわとした白い何か。
それは曖昧な存在だけど、一人一人に必ずあり、決して離れることがない。
それこそ命で、祝福で、
だから大丈夫なんだ、と思える。

“今”がどんどん“過去”になって忘れてしまうことに不安を覚える花しす。
花しすの人生に何度も現れる人物、新田人生。

花しすと一緒に、
私も新田人生に諭され、許され、祝福してもらった。

西加奈子さんは
「わたしは、いのちのことを書きたかった」と後書きで書いている。
『ふる』だけでなく、西加奈子さんの小説はすべて、
いのちについて書かれている気がする。

西加奈子さんのやわらかな、
すべてのものを包み込み「大丈夫」と見守る視線。
小説の中で起こるできごとは強烈でも、
やわらかな視線がどの話でも感じられて、
その視線が自分にも注がれているように思えて心地いい。

どんなに辛い状況だとしても、
底なしのやさしさに、生まれながらの祝福に浸れること。
それこそ、西加奈子さんの小説の魅力ではないか、と思う。




『ふる』

池井戸花しす、28歳。
職業はアダルトビデオのモザイクがけ。
「いつだってオチでいたい」と望み、
誰の感情も害さないことにひっそり
全力を注ぐ彼女に訪れた変化とは―。
日常の奇跡を祝福する「いのち」の物語。

参考:「BOOK」データベース



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あひる

★4つ。

3編を読んで、望遠鏡を覗いているような気持ちになった。
なかなかピントが合わない望遠鏡。
覗いているうちにふと、
くっきりした情景が見えてくる。

それは知らない誰かの日常。
淡々とした中に起こる、
経験したことは無いはずだけど、
どこかで似たような思いを味わったことがある気がする、
そんな情景。

見ているうちにまたピントが合わなくなる。

登場人物たちがどうなるか全く分からないまま、
ふっと情景が切り替わる。
あ、終わりか…
と少し物足りない気もするけれど、
結末が気になる大事件が起こっているわけでもないから、
まあいいか。
でもなぜか、しばらくするとまた望遠鏡を覗いて、
どこかにピントが合わないか探してみたくなる。
そんな感じ。

あれ、終わり?って思ってしまうあっさりさ、なんだけれど、
どうしてかもう少し今村夏子さんの世界に浸りたい気もしてくる。

この、ふっと情景が切り替わってしまう
あっさりさと余韻、
長編ではどんなふうになるのか、とても気になる。




『あひる』

何気ない日常の安堵感にふとさしこむ影。
淡々と描かれる暮らしのなか、
綻びや継ぎ目が露わになる。

あひるを飼うことになった家族と
学校帰りに集まってくる子供たち。
一瞬幸せな日常の危うさが描かれた「あひる」、
ほか2編。

参考:Amazon 内容紹介


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授乳

★4つ。

村田沙耶香さん、初。
3つの短編はみな、若い女性が主人公。
話自体はわりとグロテスク、
嫌悪感を感じてもおかしくない。
なのに私はするすると、何が起こるんだろう…
とドキドキしながら読んでしまった。
嫌悪感を感じる小説もあるのに、どうしてだろう。

3人の主人公は皆、自分自身の内なる世界を守ろうとして外界を拒絶している。
自分以外の他者に対する嫌悪感、そして、
理解できないがゆえの恐怖、がある気がした。

彼女たちは自分がそれを怖がっているとは思っていないようだけど。
その彼女たちの孤独、
外界と交わってくだらない俗物になぞならない、というプライド、
そして認識しきれていない恐怖。
それがかすかに、思春期のほんの一時期、
少しだけとらわれていた思いに似ている気がする。

彼女たちはどこに行くのか、
少しずつ他者と交わりなんとか外界と適合していくのか、
それとも自分自身の世界を打ち立てて生きていくのか。
現実においては、
他者を拒絶して生きていくのは、とてもとても難しい。
彼女たちはそれを成し遂げてしまうのか?いったいどうやって?
というところに、興味を感じずにはいられない。

「授乳」の主人公の女子中学生の「私」は
まだまだ行く末が見えない。
「コイビト」の真紀は
自分のいびつさを美佐子に見て怖ろしくなるけれど、さてこの後は。
そして「御伽の部屋」のゆきは
自分だけの世界を構築することに怖ろしいことに成功しつつあるようだ。

自分の世界と外界。村田沙耶香さんの小説は、
ほかのものもそれがテーマになっているのだろうか。

そして、多くの方が感想として言っていることだけれど、
村田さんの小説の主人公たちが抱く外界への嫌悪は
女性ならではのものなのだろうか。

私が彼女たちに対し、
共感はしないけれど理解不能というわけでもない、と感じたのは
私が女性だから、ということもあるのだろうか。
村田さんが、自分の世界を構築しようとする彼女たちにどういう結末を与えるのか、
ほかの小説も読んでみたいと思う。




『授乳』

受験を控えた私の元にやってきた
家庭教師の「先生」。
私を苛立たせる母と
思春期の女の子を逆上させる要素を少し持つ父。
私と先生は何かを共有し、
この部屋だけの特別な空気を閉じ込めた筈だった。
「―ねえ、ゲームしようよ」。表題作他2編。

参考:「BOOK」データベース

 

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俵万智:史上最強の三十一文字

★4つ。

思えば「サラダ記念日」には驚いて、
短歌(みたいなもの)を作ってみたこともあったなあ…
そこから趣味になる、というまでには至らなかったけど。

最近また短歌に興味が出て来て、そこにこの大特集。
やっぱり原点かも、と思って読了。

収録されている数々のインタビューや評論を読んで、
そうか俵万智さんの短歌の特徴はその明るさ、
人生に対する肯定感にあるのか、と納得した。
淋しさや苦しさをも含み、
根本的に人生に対しすべてを前向きに受け入れる。

私はどちらかというと、根本に否定や苦しさや辛さがあり、
でも前向きな明るさを含む、というものが好き。
小説でも短歌でも。

似ているようで方向性が真逆。
そこが「俵万智さん大好き!」とはなりきらなかったところかも、と
サラダ記念日から長い時を経てようやく腑に落ちた。

久しぶりに読んだ俵さんの短歌は
切ない状況を詠っていてもどこか爽やかで、
それこそが俵さんの味わい。
「俵万智さん大好き!」ではないけれど、
これもなかなか心地いいなあ、と思う。




『俵万智:史上最強の三十一文字』
『サラダ記念日』から30年。
我が子、震災、恋…
今なお現代短歌のトップランナーである
俵万智の大特集。

参考:Amazon 内容紹介


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神様

★4つ。

9つの短編が入った川上弘美さんの『神様』。
そのお話はどれも、ちょっぴりヘンなものがごく普通に、
日常の延長として淡々と受け入れられている不思議世界、という感想。

川上弘美さんのほかの小説にも感じられる
この何でも静かに受け入れていく感じ、
それまで自分の周りにあるものとは少しちがっていても
自身の一部としてさりげなくしっかりと受け止める感じ、好きだ。

考えてみれば、私が本を読む理由は
そこにあるのかもしれない。
小説の中では現実と少しちがうことが起こって欲しい、
そしてそのことがまるで自分自身に
明日にも起こるような気分にさせて欲しい、と思っている。
それこそが私にとって本を読む醍醐味なのだ、と思う。

『神様』ではたとえば
くまとか、壺の中に住む女性とか、くっきりした形を持つ非日常が
日常のような顔をしてさりげなく生活に入ってくる。

うちの近所にも料理の上手なくまさんが
普通に暮らしているんじゃないか、という気がしてきて、
それがなんだかじんわりと心地いいのだ。

1番印象深いのは「離さない」。
とても静かで、相当怖い。
自分に同じことがあったら、危険と分かっていても抗えないだろう。
そしてちょっぴり、同じ出来事を味わってみたい、とも思ってしまう。
「春立つ」も気になる話。
年を取ったことでちがう関わり方ができる、ということは、
切ないようで、希望でもある。

最初の「神様」は近くに越してきたくまさんとの交流。
するっと入ってくる優しい非日常が心地よかったのに
最後の「草上の昼食」でまたするっと去ってしまって、かなり切ない。

川上弘美さん、『七夜物語』のラストがちょっと自分には悲しすぎて
しばらく読んでいなかったのだけど、
『神様』で感じたこの非日常感をもっともっと味わいたい。
ほかの作品も色々読みたい、と改めて思いました。




『神様』
不思議な“生き物”たちとのふれあいと別れ。
心がぽかぽかとあたたまり、
なぜだか少し泣けてくる、
うららでせつない9つの物語。
ドゥマゴ文学賞、紫式部文学賞受賞。

参考:「BOOK」データベース


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村上海賊の娘

★4つ。

本屋大賞、吉川英治文学新人賞ダブル受賞の
和田 竜さん『村上海賊の娘』
主人公は戦国の世に瀬戸内海を席巻した村上海賊家、
中でも村上家の名を世に知らしめた
村上武吉の娘、景(きょう)。

自分の腕に自信満々で
実際それだけ強くて乱暴者の姫様、
でも素直で飾らなくて、実はとってもロマンチスト…
というのが、物語の最初の頃の景の印象。

景の父親がそう思っていたように、最初の頃の景は
二十歳と言えどまだ子供、という感想。
しかし、戦国という厳しい時代の
どうにもならない体験を通して、彼女は成長する。

一度挫折して、諦めて、
それでも自分の譲れないものに気づき大切にしようと決める。
開き直って自分の道を貫く決意をした景は、凛として美しい。

残酷な時代に力いっぱい生きた景や、
周りの人々の潔さ。
家を守るため、ただそれだけのために命がけで戦う人々。
今となってはその家も時代の狭間に消えてしまい
彼らの願いは叶わなかったけれど、
信念を貫いて生き、死んでいった彼らを
憐れ、とか悲しい、とは思わない。
それは彼らが誰かの言いなりでなく
心から大切に思うもののため、
自分自身の信念や思いを守るために生きていたからなのだろう。

歩める道が様々にある現代に生きる自分は、
ぐらぐらと迷ってしまいがちで。
戦国の世に生まれたかった、
なんてことは思わないけれど、
彼らのただ一つ守り抜こうとする信念が、
道徳的な善悪は二の次に一本筋の通った生き方が、
眩しくて少しだけ羨ましくも感じてしまうのだ。




『村上海賊の娘 文庫 1-4セット』
戦国の世にその名を轟かせた村上海賊。
強勢を誇る当主の村上武吉、
その剛勇と荒々しさを引き継いだのは、
娘の景だった。
この姫が合戦前夜の難波へ向かう時、
物語の幕が開く―。

参考:「BOOK」データベース

 

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ベーグル焼いたり、本読んだり。

備忘録といいますか、
読後に自分の中に湧く気持ちを言葉にして、
ついでにブログにしてみました。

ベーグル焼いて売るのがお仕事。

るん

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