★4つ。

『スプートニクの恋人』、久しぶりに再読しました。
インタビュー集『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです』
村上春樹さん自身が『スプートニクの恋人』について語っていた、

「とにかく全部ネジを締め、
余計なものはすべてはずして、
自分が納得いくものだけを」

詰め込んだ文体を味わいたかったから。

“文体を味わう”ことが最初の目的だったけれど、
読み進むうちにやっぱり話の世界に夢中になっていた。
この結末の無いような不思議なストーリーに対して
答えを求めた訳じゃなく、
そこに描かれている孤独に、改めてまた惹かれたのだ。

村上春樹さんの小説の登場人物たちは皆、孤独で、自由だ。
人は孤独だ。どんなにあがいても、最終的には孤独だ。
でも、「人は孤独だ」と認めることと、
諦めや投げやり、絶望はまったく違うものだ。
人は孤独だからこそ、求め合い、許し合い、愛し合う。
痛みがあるからこそ、他人の痛みを思いやることができる。
孤独でないなら、自分と他人が同一であるならば、
求め合う必要も愛し合う必要も無い。
自分は孤独ではない、と考えることは、
時として自分と他人を同一視し、
他人の痛みを理解しない傲慢さにつながることすらあると思うのだ。

村上春樹さんの小説を読むたび、
繰り返し繰り返し、私はそのことを感じている。
孤独で、自由である人間の存在。
そしてそれでも愛し合い、人とつながることの大切さ。

『スプートニクの恋人』、この奇妙なストーリーは
帯の"a weird love story"という言葉通り、
奇妙に見えてもやっぱりラブストーリーなのだと思う。

孤独な人同士が求め合い、すれ違い、傷つけ合い、許しあう。
語り手の“ぼく”はどれほど痛みを感じても、
孤独を安易に埋めることを選ばす、正面から受け止め、
真に自分が必要とする人を求め続けた。
そして、“ぼく”が恋した“すみれ”。
彼女が何を経験したかは本当には分からないけれど、
すみれもまた、自分の孤独から目を背けず、
真正面から受け止めたのではないかと思う。
彼らが取った行動の答え、
この先どうなるかは分からないけれど
少なくともこの時点での答えが、
最後の4ページにあるように見える。
その答えが万人に共通するものであるとは
もちろん思わないけれど。




『スプートニクの恋人』
a weird love story
*weird…とても奇妙な、この世のものとは思えない

22歳の春にすみれは生まれて初めて恋に落ちた。
広大な平原をまっすぐ突き進む
竜巻のような激しい恋だった。
恋に落ちた相手はすみれより17歳年上で、
結婚していた。
更につけ加えるなら、女性だった。
それがすべてのものごとが始まった場所であり、
(ほとんど)すべてのものごとが
終わった場所だった。

参考:/ 出版社・著者からの内容紹介

★5つ。

大評判の『1Q84』をまだ買ってすらいないのは、
買ってもどうせもったいなくってなかなか読めないからです。
その代わりと言ってはなんですが
久しぶりに読み返してみた『螢・納屋を焼く・その他の短編』。

どの短編も結末らしい結末はなく、
ある時間からある時間までに
起こったできごとや情景を
すとん、と切り抜いてそのまま書いている、という感じ。

結末のない不思議な短編を読むと
「この後はどうなったんだろう」
「この意味はなんだろう」
と気になることが多いのですが、
『螢・納屋を焼く・その他の短編』は
なぜかそれが無く、ただ余韻に浸るだけ。
この世界はこれで完結なのだ、という印象を受けるのです。
とは言っても『螢』は長編『ノルウェイの森』になるのだけれど、
淡い闇の中を螢がとびたつ、
そのシーンでこの『螢』という物語は完璧に完結している。
村上春樹さんの短編はいつもそんな印象で、
その分よけいに、
その世界から戻ってくることがなかなかできない。

「死は生の対極としてではなく、その一部として存在している。」
『螢』にあるその一節のように、
日常の中に不思議な世界が、
そっと存在しているような気がしてしまう。
部屋にかすかに漂う煙草の残り香のように。
間違いなく日常ではあるのだけれど
(その場所が奇妙な「象工場」であったとしても)
どこかがほんの少しずれている、
そんな空間に連れて行かれる感覚です。

村上春樹さんの小説はいつもそんな感覚で、
読み終わった後も何かと引きずってしまいます。
『1Q84』、楽しみだけどもったいない、
ハマってしまうのが分かっているから読むのが恐い…
いつ読むかまだ迷っています。



『螢・納屋を焼く・その他の短編』
彼女は時々僕の腕に体を寄せた。
でも、それだけだった。
彼女の求めているのは僕の腕ではなく、
誰かの腕だった。
僕の温もりではなく、誰かの温もりだった…。
もう戻っては来ないあの時の、
まなざし、語らい、想い、そして痛み。
リリックな7つの短編。

参考:「BOOK」データベース

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★5つ。

お正月に実家に帰って、
本棚にあった『風の歌を聴け』を久しぶりに再読。
初めて読んだ高校生の時と同じく、
一見軽快であるけれど透き通った寂しさがあふれる情景に
今でもやっぱりハマってしまった。

私にとって、村上春樹さんは“基本”。
色々な小説を読んでも、
なぜか惹かれて戻ってきてしまうところ。
感情を言葉にすることがほとんどないけれど
温かいもの・熱いものを持った登場人物たちに
特別な愛着を感じ続けているのです。

デビュー作である『風の歌を聴け』、
やはり村上春樹さんの原典だと思います。
淡々とした語り口、特に事件が起きるわけでもない夏の情景。
それでもやっぱり、
奥底に静かだけど熱い何かが流れているような。

村上春樹さんがエッセイで
「『風の歌を聴け』は忙しい中、細切れの時間で少しずつ書いた。
だから情景がぶつぶつと切れてしまい、それがクールだと評された」
と(原典を忘れてしまったから正確な引用ではないけれど)
語っていましたが、「僕」も「鼠」も真底クールだとは思えない。
“何か”を秘めた静かな語り口に惹かれているのかもしれません。

そして文章に散りばめられている、心に残る言葉たち。
「完璧な文章などといったものは存在しない。
完璧な絶望が存在しないようにね。」
「かつて誰もがクールに生きたいと考える時代があった。
-僕は心に思うことの半分しか口に出すまいと決心した。
-そしてある日、僕は自分が思っていることの
半分しか語ることのできない人間になっていることを発見した。」
それから、犬の漫才師と呼ばれたDJの心の底からの一言。

その後の村上春樹さんの、物語性がある小説とはちょっと違う。
するすると読めるけど心の奥に沁みてくる、
何度も読み返してしまう本です。



『風の歌を聴け』
1970年の夏、海辺の街に帰省した「僕」は、
友人の「鼠」とビールを飲み、
介抱した女の子と親しくなって、退屈な時を送る。
2人それぞれの愛の屈託を
さりげなく受けとめてやるうちに、
「僕」の夏はものうく、ほろ苦く過ぎさっていく。
青春の一片を乾いた軽快なタッチで捉えた
出色のデビュー作。

参考:「BOOK」データベース

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★5つ。

村上春樹さんが「走る」ことについて語ったエッセイ。

25年にわたって世界各地でフルマラソンや100キロマラソン、
トライアスロンを走ってきたランナー・村上春樹が
走ることで自分の生き方や小説がどのように変わったのか、
を真正面から語っています。

「走ることについて正直に書くことは、
僕という人間について(ある程度)正直に書くことでもあった。
…だからこの本を、ランニングという行為を軸にした
一種の『メモワール』として
読んでいただいてもさしつかえないと思う」(前書きより)

ふざけたもの・旅行もの・真面目に語っているもの、
村上さんのエッセイはほぼ全て読みましたが
これほどまで真摯に「自分」というものを
考察した文章は初めて読みます。
25年間、苦しい思いを何度もしながら
それでも走り続けることで築かれた「何か」が
村上さんの小説世界と密接に関係しているのだ、と深く納得。
その「何か」を垣間見ることができるのはファンとして嬉しい。

「老い」を受け止める村上さんの、
その受け止め方にしみじみ感じるものがありました。

走ってきたことを振り返ることで今までの人生を、
そしてタイムが遅くなってきたことで
「老い」を見つめている村上さん。
焦らず後悔せず、人生の悪いところや喜ばしくないところ、
これから老いていくことも全て「そういうものだ」と受け入れている、
その姿勢は今までのエッセイでも好感を持っていたところですが
この本では一層それが表に現われているような。

自分もこのように「老い」を受け入れられたらいいな。
走るのは大大大の苦手なのでマラソンはまずしないけど、
村上さんにとってのマラソンのような「何か」を
自分も続けたい、と思う。

ランナーが読めば体で納得できるであろう文章。
私は頭で想像してみるだけだけど、
文章にしてくれたことに感謝です。
 
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1982年秋、専業作家としての生活を開始した時、
彼は路上を走り始めた。
それ以来25年にわたって世界各地で、
休むことなく走り続けてきた。
走ることは彼自身の生き方をどのように変え、
彼の書く小説をどのように変えてきたのだろう?
走ることについて語りつつ、
小説家としてのありよう、創作の秘密、
そして「僕という人間について正直に」、
初めて正面から綴った書下ろし。

参考:「BOOK」データベース
『走ることについて語るときに僕の語ること』


★4つ。

ゆるい、ゆるすぎるよ村上さん。

かるた形式で言葉が並べられ、
ひとつずつにお話がついてるんだけどその内容が…

お話?だじゃれ?
簡単に言うとわけわからん。

エッセイで時々見られる村上春樹のゆるゆる世界。
安西水丸さんのヘタウマな絵に脱力感がさらに煽られる。

元々春樹好きじゃなければあまりオススメできない…
でも好き。

村上かるたうさぎおいしーフランス人村上かるたうさぎおいしーフランス人
安西 水丸

走ることについて語るときに僕の語ること 村上ソングズ 「ひとつ、村上さんでやってみるか」と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける490の質問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか? (Asahi Original) ロング・グッドバイ 「村上春樹」を聴く。 -ムラカミワールドの旋律-(CD付)

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