★3つ。

『東と西1』は6人の作家さんが
日本のどこかをテーマに描いた小説集。
それぞれの「東」と「西」が描かれていて興味深い。
しかし、とにかく奇妙で、ちょっと入り込みづらかった。

いしいしんじ 『T』
とにかく奇妙、としか言いようが無い。
いしいしんじさん特有の深い優しさ、感じられないことも無いけれど、
奇妙さが勝っていて大好きな作家さんだけに戸惑ってしまった。
引き込まれるけれど、この話を最初に読んでいたら
いしいしんじさんのイメージが今とは違っただろうな。

西加奈子 『猿に会う』
奇妙な話が並ぶ中、ふつうの女の子の日常がさりげなく描かれている。
優しい気持ちになる読後感で、この短編集の中で1番好き。
サラバ!が話題の西加奈子さん、ほかの小説も読んでみたくなりました。

栗田有起 『極楽』
1万50歳で生涯を終えた筈のある生き物が辿り着いた奇妙な場所。
そこを極楽だと思う“彼”と、地獄のようなところだと思っている周囲の人々。
“彼”は幸せだと言うけれど、
本人が幸せならそれでいい、と思い切ることもできず、
さりとて“彼”に同情するのもおかしな話で。
救いがあるような無いような、気持ちがいいようなわるいような、
不思議な読後感でした。

池田進吾 『赤、青、王子』
これまたとびきり奇妙な話。
主人公の彼は一体何をしているのか、何をしようとしているのか、
何を考えているのか、『T』以上にさっぱり分からない。
分からなすぎて、ほかの話を読んでみよう…とはちょっと思えなかった。

藤谷治『すみだ川』
救いがあるのか無いのかよく分からない話が多い中、
分かりやすいハッピーエンドはホッとしたし、
落語風の語りは新鮮で面白く読みやすかった。
けれど、起こる出来事はあまりに予想通り過ぎるなあ。
ホッとはするけどちょっぴり物足りない感じが残りました。

森絵都 『東の果つるところ』
幼い頃から植えつけられた一族の慣習による悲劇…なんだけど
その「慣習」があまりにもばかばかしくって。
そこにユーモアを感じていいのか、
しかしそこから起こった出来事は幸せな事では無くて、
シリアスなのかユーモラスなのかよく分からないまま読み終えてしまった。
『カラフル』でも感じたけれど、森絵都さんのユーモアって
私にはよく分からないかもしれない。

…そんなわけですべてを通して「面白かった!」とは言い切れず。
でも、よく分からないながらもそれぞれの「西」と「東」が描かれていて
味わい深く、興味深い、という感想。
そして、色々な作家さんの作品を読めるアンソロジー、
たまに読むと発見があってやっぱり面白い。
今回は西加奈子さん。
話題の作家さんだけれど、いきなり長編はなあ…と手を出しかねていたけれど
ぜひ読んでみよう、と思います。




『東と西 1』

いしいしんじ、栗田有起、西加奈子、
藤谷治、森絵都、池田進吾。
6人の書き手が、古今東西、
日本のどこかをテーマに描いた
まったく新しいかたちの小説集。

参考:AMAZON 内容紹介

★3つ。

美味しいものがとっても好き、
美味しいものが描かれた本も大好き。
『チーズと塩と豆と』、題名に惹かれました。
シンプルでストレートで良いではないですか。

『チーズと塩と豆と』は昨年BSで放送された
「プレミアム8 愛と胃袋 直木賞作家が食べて書くヨーロッパの田舎」
から生まれたアンソロジー。
角田光代さん、井上荒野さん、森絵都さん、江國香織さんの4人が
ヨーロッパの各地を旅行し現地の食をテーマに短編を執筆、
それを原作としたドラマと、4人の旅を追った
紀行ドキュメンタリーを合わせた番組…だそう。

なじみの無い土地のなじみの無い料理ばかりなのがしっくり来ない、
なんて思っていたけれど
その番組があったからこそ書かれた小説だったのね。
4編とも土地の料理と人々とがしっかり描かれているから、
番組を見て読んだなら、またずしりと来るかもしれないな、
という感想を持ちました。
ただ見ていない分、先入観無しで読むことはできたかも。

角田光代さん「神さまの庭」と
森絵都さん「ブレノワール」が奇しくも、
生まれた地域の古い伝統とそれを守る人々に
反発を覚える主人公、という同じ構図を持つ話。
「神さまの庭」の女性は伝統を大切にしつつ
新しい生き方をしようとしていて、
「ブレノワール」の男性は新しい考えを取り入れつつも
生まれた土地に根付こうとしている。
好みなのは、より清々しさを感じた「神さまの庭」。
悲しみと背中合わせにある希望と、
“食べること”が持つ、人を幸せにする力が感じられる話でした。

井上荒野さん「理由」は救いが感じられなくて、
読んでてちょっとしんどかった。
江國香織さんの「アレンテージョ」は、
読んでいる間なぜか、江國香織さんの話だと忘れていました。
珍しく男性が主人公だからかな。
でも、哀しさを含んだ透明な明るさは江國香織さんらしくもある。

それぞれに味のある話だったけど、
「神さまの庭」に出てくる料理が1番美味しそうだったんだよね…
結局、食い意地が張ってるみたいです。



『チーズと塩と豆と』
頑な心と心が接触する、ヨーロッパの片隅。
角田光代-スペインのバスク地方、
井上荒野-イタリアのピエモンテ州、
森絵都-フランスのブルターニュ地方、
江國香織-ポルトガルのアレンテージョ地方。
4人の作家がそれぞれの土地を旅して描いた
「食と愛」の物語。

参考:「「BOOK」データベース


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★4つ。

yom yom(ヨムヨム) 2008年3月号を買った時と同じく、
小野不由美さんの十二国記シリーズ目当てで買った
yom yom(ヨムヨム) 2009年10月号。
連作はあるみたいだけど、小説もエッセイ等もすべて読み切り。
毎回買わなくてもいいし、気が向いた時に
色んな作家さんの短編をパラッと読めます。

yom yom(ヨムヨム) 2009年10月号の特集は
「誰もがすなる日記」。
日記にまつわる様々な文章が収録されています。

中でも面白かったのは、
角田光代さん・川上弘美さん・山本文緒さん、
3人の作家さんたちの日記にまつわる対談。
同じ作家さんでも日記をつけていたりいかなったり、
日記小説や人の日記を読むのが好きだったり好きじゃなかったり。
女流作家の対談、という固いイメージではなくて、
女どうし気楽におしゃべりをしている雰囲気が楽しい。

高山なおみさんの夏日記『八月の日々ごはん』も楽しかった。
食べるの大好きだから、
人が何を食べたか書いてある日記、好きなんです。

タイトルだけで笑ってしまったのは
森見登美彦さんの富士登山日記
『この文章を読んでも富士山に登りたくなりません』。
…確かに、あんまり登りたくならない。

そして、目当ての十二国記『落照の獄』。
傾きかけている柳国に現われた凶悪な犯罪者。
彼をどう裁くべきか苦悩する官吏の話です。

小野不由美さんが描く人間は、
どうしてこんなに迫力と説得力があるのだろう。
裁判員制度のことも浮かんできて、
異世界である柳国だけど他人事では全く無い。
十二国記で度々語られる「国が傾く」とはこういうことか…
とぞわぞわしながら読んだけど、
じゃあ、今、日本も傾きかけているんじゃないの?
と思ってますますぞっとしてしまった。
心の闇、人間の怖さや苦悩が静かな迫力で語られています。
柳国がなぜ傾きかけているかは謎のままだったけれど…
十二国記の続き、早く読みたいよ!

何か読みたいけど長いのはちょっとな、という時に
実によくハマってくれるyom yom(ヨムヨム)。
小野不由美さんの最新作が載っているか
チェックは欠かせないけれど、
それ以外の時でも時々買って楽しみたいな、という感想です。



yom yom((ヨムヨム)2009年10月号
手軽な文庫で読書に親しんでいる読者に向けた、
「読む」楽しみをもっと拡げるためのヨムヨム雑誌。
2009年10月号はいつもよりちょっと厚めで、
内容も充実。
趣の異なるさまざまな小説、
エッセイ等は全編読み切り。
お好きな作家、気になる頁からお読み下さい。

参考:新潮社公式HP/Amazon

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★3つ。

図々しくも読んでしまった「十代のための」物語。
『きみが見つける物語 十代のための新名作 休日編』
5つの短編が収録されたアンソロジー。
目当ての1つ、万城目学さんの話は
読了済みだったというまぬけっぷり…。
でも、アンソロジーって色々読めてやっぱり楽しい。 

「シャルロットだけはぼくのもの」/米澤穂信
  『夏季限定トロピカルパフェ事件』の中の1遍。
  夏の暑さが思い浮かぶ文章と、意外な“謎”。
  爽やかな印象で楽しめたけど、
  登場人物のキャラと関係性が分かっていないと
  面白さがうまく伝わってこない気が…。
  通して読んだほうが面白そう、という感想です。

「ローマ風の休日」/万城目学
  『鴨川ホルモー』の続編、『ホルモー六景』の1遍。
  主人公の“少年”のいかにも高校生らしい若さと
  ちょっと切ないラストシーンは、これだけでも十分楽しめる
  …と思うけど、贔屓目かもしれませぬ。

「秋の牢獄」/恒川光太郎
  女子大生の藍は、“11月7日”を何度も繰り返している…。
  『秋の牢獄』の表題作で、独立した短編。
  “タイムスリップ”という話自体はよくあるけれど、
  全体に漂う薄ら寒さ、結末が見えない怖ろしさ、
  奇妙な余韻がかなり好みです。
  恒川光太郎さんの他の作品、ぜひ読んでみよう。

「春のあなぽこ」/森 絵都
  『永遠の出口』の中の1篇、これも読了済みですが再読。
  ごく普通の少女・紀子の成長を描いた連作短編で、
  「春のあなぽこ」は中学生になる直前の春休みの話。
  子どもゆえのまっすぐな、身が切られるような感情。
  思春期へ向かう途中の胸苦しさを思い出させてくれる話。

「夏の出口」/角田光代
  『学校の青空』収録、独立した短編。
  学校に感じる違和感、息苦しさ。
  浮かれている周りになじめない“なお”も、
  わざとらしいほどに浮かれるなおの友人たちも、
  どちらにも昔の自分が感じられ、気恥ずかしくて、愛おしい。
  角田光代さん独特の痛々しいほどのリアルさが感じられました。

5つの個性が集まった中、どんなふうに光っているか。
読了済みのものもなんだか新鮮でした。
初めて読む作家さんに出会える良さもあるし、
これからも時々アンソロジーは読んでいきたいな。
「十代のための」シリーズは、やっぱり図々しい気がするけど。



『きみが見つける物語
十代のための新名作 休日編』

とびっきりの解放感で校門を飛び出す。
この瞬間だけは、学校のことも嫌な奴のことも、
宿題のことも忘れて…。旬の作家が集結、
それぞれが紡いだ休日の大冒険とは?

参考:「BOOK」データベース

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★4つ。

小説誌はあまり買ったことがないのですが
小野不由美さんの十二国記シリーズ目当てで買ってみました。
特集は「ファンタジー小説の愉しみ」、
畠中恵さんの「しゃばけ」シリーズも。

色んな作家さんの小説をいっぱい読めるって単純に楽しい。
漫画アシスタントさんへのインタビューなども面白かった。

なかでも気になったのは森見登美彦さん「或る失恋の記憶」。
独特なテンポがある文体。
大真面目だからこそなんだか滑稽な大学生活、
印象が強くて妙に癖になる。

目当ての十二国記「丕緒(ひしょ)の鳥」は、
別の視点から見た慶国の話。
緻密な世界観と人々の細やかな心情はやっぱり十二国記!
久しぶりに読めてとっても嬉しい…
けど、やっぱり“別の視点”じゃなくて続きが読みたいなああ。
またyom yomに新作が載るのかも、と期待してしまいます。

不満は、ページにところどころ蛍光インクのような色が印刷されていて。
印刷ミスかと思ったけどデザインらしい、でもどーも読みづらい…。

中味については不満なし。読み応え十分だったし続きも気になる。
次回もつい買ってしまいそうです。
 
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本屋さんでよく見かける
Yonda?パンダが表紙の季刊誌。
「読む」ことの好きな人たちに向けた、
「読む」楽しみをもっと拡げるためのヨムヨム雑誌。

参考:新潮社公式HP『yom yom(ヨムヨム)』