★4つ。

小学校1年生になったばかりのかのこちゃんと、
ちょっぴり不思議な猫のマドレーヌ夫人。
『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』は1人と1匹が等しく主人公。
どちらも実に生き生きとしています。

「響きが気に入った」という理由で
難しい言葉を意味も分からず覚えるかのこちゃん。
男子対女子の勝負や、どこかがヘンなお茶会ごっこ。
「刎頚(ふんけい)の友」すずちゃんとの出会い。
すべてが初めて経験することで
悩んだり辛かったり、とびっきり楽しかったり…
そうそう、子供の頃ってこんな感じだった!
と懐かしい気分になりました。

マドレーヌ夫人のほうはと言うと、
まずは彼女の「夫」に驚いて心を掴まれ
その生活に引き込まれていく。
個性的な猫たちが集う猫の集会、
本当に猫同士こんな会話を交わしているのかも、
という気がしてきます。
万城目学さん、小学校1年生の女の子や猫の世界を
よくここまで生き生きと書けるなあ、と感心しきり。

生き生きとしているからこそ、
1人と1匹が出会う不思議な出来事もスッと信じられるし、
彼女たちが経験するお別れに心が痛くなる。
まだ小さいかのこちゃんだけれど
別れの切なさや寂しさをしっかりと受け止めて、
どうすべきかをきちんと自分で考えている。
お転婆なかのこちゃんが
別れにじっと耐える姿に胸を衝かれました。
かのこちゃんにとってこの別れは、
悲しくても大切な大切な経験になるんだろうな。

そして、独立独歩の猫らしい猫、マドレーヌ夫人。
干渉はしない・されないけれど、周りの人間や猫、
「夫」に対し温かな気持ちをたくさん持っている。
互いの自由を尊重しながら想い合う彼女たちは大人で魅力的で…
それでも、お互いに自立しあっていてなお、
みんなが寄り添いあえる未来があればいいな、と思ってしまう。
生き生きとした登場人物+猫たちの想いが
じわりと心に沁みてくるお話、という感想です。

ところで、かのこちゃんのお父さん
(優しくかのこちゃんを見守る味のある人物)は
鹿としゃべったことがあるんだって。
これって、あの小説のあの人?じゃあお母さんは?
って勘繰ってみるのもまた楽しいものです。



『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』
かのこちゃんは小学1年生の元気な女の子。
マドレーヌ夫人は外国語を話す優雅な猫。
その毎日は、思いがけない出来事の連続で、
不思議や驚きに充ち満ちている。

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★3つ。

※いつもより少し、ネタバレ多めです。

『鴨川ホルモー』『ホルモー六景』は京都、
『鹿男あをによし』は奈良、
そして『プリンセス・トヨトミ』は大阪。
関西ってどこを取っても小説の舞台になりやすい
味のあるところだなあ、
とちょっと羨ましくなってしまう。

今回も“秘密”の正体がなかなか分からず、
気になってたまらなくなってしまいました。
半ばまでは説明が多くて時間がかかったけど、
途中からは一気読み。
大阪のイメージにうまくハマって、
心がほっこりする素敵な話でした。

…なんだけど、『鴨川ホルモー』『鹿男あをによし』に比べて
ちょっと腑に落ちない点が残ってしまった。

“秘密”があまりに大き過ぎて、
いくら何でも守り続けるのはムリでは…と感じてしまう。
反発する人、もっといっぱいいるような。

キャラはそれぞれ魅力的なのに
うまく動ききれていないような印象も。
特に調査官の1人・鳥居、
面白いキャラなのに最後まで蚊帳の外なのがちょっと残念。

1番引っかかったのは、私の勝手なイメージが原因。
私の中の「ねね」像が
『プリンセス・トヨトミ』のねねと一致しなくて。

私のねね像、「茶々」と対立し
大坂の陣でも静観していた、というもの。
そのイメージだと、ねねが茶々の血筋のために…
という行動はすんなり飲み込めなくて。
茶々とは協力していた、というのが近年の説らしいですが
1度抱いたイメージはなかなか崩れず…
そのイメージ抜きにしても、
「豊臣の血筋」と一言で言って
女性側の血筋をあまり考慮に入れていない、
男性目線の伝説だなあ、と感じてしまいました。

こう書くと不満ばかりのようですが、
全体的にはとっても面白かったのです。
「何かアホなこと」を真剣にやっている男たち、
強く優しい女たち。
舞台が大阪でなくては成立しなかった、そして
ムリがあるけど大阪ならもしかして…と思わせられる話。
大阪の方はどんな感想なのかな、
少し見たところでは悪くない印象のようだけど
ちょっと話を聞いてみたい。

万城目学さん、好きで面白かったからこその☆3つ。
『鴨川ホルモー』のような、
ヘンだけどクスクス笑えて説得力のあるお話を期待してます。
次はどこが舞台になるのだろう?
北海道ではないだろうなあ、残念ながら。



『プリンセス・トヨトミ』
このことは誰も知らない。
5月末日の木曜日、午後4時のことである。
大阪が全停止した。
長く閉ざされた扉を開ける“鍵”となったのは、
東からやって来た3人の調査官と、
生まれたときから西にいた2人の少年少女-
いや、この場合、2人の少女というべきか。
前代未聞、驚天動地のエンターテインメント、
始動。

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★3つ。

『鴨川ホルモー』の万城目学さんの初エッセイ集。
小説を書き始めた頃の話、
学生時代や子供の頃の思い出話、
旅行記、ちょっと笑える妄想、
などなど内容は色々です。

『ザ・万歩計』は抱腹絶倒、という感じではないけれど
思わずふふっと笑ってしまう話が多くて
軽く、気持ちよく読める、という感想。
個人的に好きなのは「ニュー・ソング・パラダイス」。
人類の叡智を詰め込んだ大容量メモリーに
音楽を入れるとしたら、どの歌のどの部分を入れる?
…なんておバカな妄想を真剣に考える万城目学さん、
想像すると笑ってしまうけど
自分ならどうするか、やっぱり真剣に考えてしまった。

モンゴルの遊牧民と暮らした体験記は
自然とともに生きることの大変さに言葉を失うけれど、
それすらなんだか面白おかしい。
笑えたかと思うと、祖父や飼い猫の思い出など
心がしんとするような、少し切ない話も。

万城目学さんは、日常に起こるささやかな出来事にも
意味や面白みを感じとっているよう。
そして、そんな出来事に遭遇している自分を
自分で観察しているみたい。
一歩離れた自分がそこにマヌケさを見ていたり、
切ない話でものめり込み過ぎずに淡々と書いていたり。
だからどんな話でも重すぎずさらっと読めます。

観察眼と感受性が鋭くて、
だからこそ普通の日々すら“マーベラス”。
その感覚、見習いたいものです。



『ザ・万歩計』
オニを遊ばせ鹿に喋らせる
マキメ・マナブのマーベラスな日々。
万博公園に出現した
オレンジ色の巨大怪鳥とは!?
「この世に存在するはずのない曲」への想い…
He can’t stop himself!

参考:「BOOK」データベース/本体帯

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★4つ。

万城目学さん、ホルモーシリーズの舞台は京都でしたが、
『鹿男あをによし』の舞台は奈良。
読んでみると同じ古都でも、京都より少し骨太なイメージでした。
小説全体に古代を偲ばせる雰囲気が漂っていて、
鹿が話すのも有り得ることだ、と思ってしまう。
奈良の歴史がうまく組み込まれ、同時に青春小説の爽やかさもあり。

スケールはかなり大きく、
書きようによっては大活劇になりそうなのに
ヒーローのはずの“先生”が完全に振り回されている。
その独特な脱力感が、気負わず楽しく読めてなんとも好きです。

『鹿男あをによし』は登場人物も魅力的。
望んでいないのに選ばれてしまった先生、
ちょっと抜けてるし人付き合いがヘタみたいだし、
イマイチ冴えないけど憎めない。
そして“先生”の生徒である堀田イト、
女子高生の微妙に動く心理が嫌味なく書かれていて、
初めはちょっと憎たらしいけど最後にはかわいく思えます。
後から彼女の気持ちを考えると、ちょっと切ない。

ラストは古典的で展開が読めたけど、
古代の雰囲気漂う『鹿男あをによし』に
よく似合っていると思いました。
とてもすっきりと気持ちよく、少し切なさも漂うラスト。

文字にしないと自分達にとって大切なことも
すっかり忘れて好き勝手やってしまう人間、
昔々の約束をずっと果たし続けている鹿。
人間なんか見下している鹿、
けれど最後には心が少し分かってぐっと来ました。

ところで先日、動物園に行きました。
雌鹿が近寄ってきたので、なんか話すかとドキドキしました。
鹿の前では油断しちゃいけません。 



『鹿男あをによし』
大学院の研究生活から一転、
2学期限定で奈良の女子高に赴任した「おれ」。
生徒との接し方に悩む彼に、
指令を下したのは美しい雌鹿。
「さあ、神無月だ-出番だよ、先生」。

参考:出版社 / 著者からの内容紹介

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★4つ。

『鴨川ホルモー』の続編、と言うか、
ホルモーに関わるオムニバス。

『ホルモー六景』のテーマは若者達の“恋”。
でもコテコテの恋愛ものというわけではなく、
ホルモーの謎があちこちに散りばめられていて
前作にハマった人にはたまりません。

恋愛部分は実に爽やか。
片思いや付き合う前の緊張感、
別れた人への複雑な感情、などなどが
清々しく描かれていて気持ちがいい。

『鴨川ホルモー』にちらっと出てくるエピソードが書かれていて
おお、そうだったのか!と驚く話もあれば、
新たな秘密・新たな展開がありそうな話も。

特に続きが気になる話は「同志社大学黄竜陣」。
これってつまり、えー?!続きはー?!

万城目学さん、
編集の方に「このまま終わることは許しませんっ!」と言われているそうな。
インタビューより)

私だって許したくない!
続きが出るまで、勝手に話を色々考えちゃいそうです。



『ホルモー六景』
このごろ都にはやるもの、恋文、凡ちゃん、二人静。
四神見える学舎の、威信を賭けます若人ら、
今日も京にて狂になり、励むは御存知、是れ
「ホルモー」。
このごろ都にはやるもの。元カレ、合コン、古長持。
京都の街に咲き誇る、百花繚乱恋模様。
都大路に鳴り渡る、伝説復古の大号令。
変幻自在の第二幕、
その名も堂々「ホルモー六景」、ここに推参。

参考:「BOOK」データベース

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