火花ほか、色んな作家

★4つ。

話題の『火花』、繊細で真摯で、どこか煌めきがある小説、という感想。
理屈っぽくてよく入って来ないところはあるのだけれど、
それは「この小説が」というよりも
「この主人公が」理屈っぽい、という印象。
主人公の徳永、こんなに難しいことを頭の中でこね回していたら苦しいだろうに…
と思うけど、彼にとってはそれが自然なことなのだろう。

真剣に命がけで何かを追及する、
ということがどれだけ茨の道であるか。
自分が思い描いていたことが実力不足で出来ない、伝えたいことが世間に伝わらない、
ということがどれだけ苦しいか。
苦しくてみっともなくて、それでもそうして生きるしかなくて、
崖っぷちギリギリを分かっていながら歩くしかなくて。

そうする中で、崖から落ちてしまう人もいる。
徳永が慕う先輩、神谷は、落ちてしまった。
自分がいいと思うことを世間に伝える術が分からず、
どうすればうまく生きられるか分からず、
より駄目な方向へ、
より世間から疎まれる方向へ、進んでしまった。

そんな先輩を呆れ、恐れ、それでもやっぱり慕っている徳永。
彼らの生きざまは器用じゃないし、成功者とはとても言えない。
けれど必死に生きている姿は身につまされるし、胸を打つ。

決して長くは続かない、けれど、魂を燃やして輝きを放つ彼ら、
徳永と神谷、それぞれの相方、そしてたくさんの芸人たち。
彼らの姿こそが「火花」なのだろう。

過剰評価、という話もある。けれど、わざわざ
「色眼鏡を排除して」読む必要も無い、という気がする。
芸人又吉直樹が書いた、というところも含めての物語なのだから。
絶賛し過ぎるのも、けなし過ぎるのも、なんだかピンと来ない。

自分は、又吉さんに好感を持っているから
面白ければいい、という気持ちは確かにあった。
それを含めても、読んだ後に胸に残る切ない思いがあることは確かだ。
 



『火花』
お笑い芸人2人。
奇想の天才だが
芸も人生もなかなかうまくいかない神谷、
彼を師と慕いつつも別の道を歩む徳永。
神谷は徳永に「俺の伝記を書け」と命令した。
彼らの人生はどう変転していくのか。
「文學界」を史上初の大増刷に導いた話題作。

参考:「BOOK」データベース


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美食日記―美味しい生活、おいしい時間ほか、色んな作家

★4つ。

つい先日読んだ『こっこさんの台所』の冒頭は

 元々 食べるよりは作るほうが好き。

『美食日記―美味しい生活、おいしい時間』の冒頭は、と言うと

 「私、食欲の奴隷なんです」

…同じく“食”をテーマにしたエッセイなのに、なんて違い!
そして私は圧倒的に、確実に、明らかに、後者側なんです。

イラストレーターの柿崎こうこさんの“食”にまつわる様々な話。
ビューティマニアで美に関する本が多い柿崎こうこさんだけど、
食べることも大好きで、矛盾した苦労も味わっているんだなあ、
と共感しながらくすくす読みました。 

自分で作る日々の食事や、旅先で出会った美味しいもの、
様々な人の食生活やお弁当事情、
そしてそして「食べたいけどキレイになりたい!」という
図々しくも赤裸々な気持ちと努力。
盛りだくさんの内容が
たっぷりのかわいい絵とともに描かれています
美味しそうなものがいっぱいでワクワクしたり、
ダイエットに取り組む様子を見て自分もやらなきゃ!と省みたり。

柿崎こうこさんは“食べること”が大好きで、
大切にして、楽しんでいるのだな、という感想。
宿泊しながらの断食体験などの
本格的なダイエット&体をキレイにするための努力だって
きっと“食”をより楽しみたいからこそ、だと思う。
そんな柿崎こうこさんの思いに
強く強く共感してしまうのです。

食べることが好き、でもキレイにもなりたい、
という思いがある方なら共感しまくってしまうでしょう。
かわいいイラストもたっぷりで、気楽に楽しめます。




『美食日記―美味しい生活、おいしい時間』

美味しいものが食べたい!
…だけど痩せたいし、キレイにだってなりたい。
ムシのいい願望を満たすべく奮闘する365日、
イラスト満載で綴られています。

参考:「BOOK」/「MARC」データベース



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こっこさんの台所ほか、色んな作家

★3つ。

歌うたいCoccoの食にまつわる
真摯だけどユーモアあるエッセイ、
リズミカルな歌詞のような文章、
旅先や沖縄の風景など数々の写真。
料理レシピも載っているけれど、決して料理本では無いと思う。
Coccoの伸びやかな世界を味わえる、という感想。

「はじめに」の最初の文章からして私には軽く驚き。

 元々 食べるよりは作るほうが好き。
 与えたい気持ちが 確実に届き、誰かの胃袋を満たせる。
 目の前で 確かに "何かできる"。

作るより食べるほうが好き、
自分好みに美味しくするために料理する、
1人より分かち合ったほうがより美味しく思える。
そんな理由で料理をする私にとっては
Coccoのような愛に溢れた理由で料理する人がいる、
ということがちょっぴり新鮮。

 歌を歌って 全てが解決できればいい。
 …
 歌うたいなのだから そんなふうに生きて行ければいい。
 でも家に帰ると
 私は台所に立ちます。
 この手から 生まれたものが確かに届く
 その瞬間 やっと救われます。
 この手で 誰かを満たすことができる
 自分の体だって 満たすことができる
 その安心感で 日々の無力感を埋めるように。

Coccoは料理するのも、文章を書くのも、
それから歌を歌うことも、
すべては「愛」から行っているのだろう。
決して私のようにくいいじが張っているからではなく!

Coccoが生まれ育った沖縄の風景、
そこにいる家族や親戚、近所の人々。
その姿は伸びやかで、ゆるやかで、
南国・沖縄らしい大らかな愛と力に溢れている。
道産子の私にはその光景は少し遠いもの。
北国の美しさと力も感じているけど、
『こっこさんの台所』に現れる南国の光景は眩しく美しく、
そこに生きる人々に少々の羨望を感じてしまう。

その料理も歌も、美しく優しく、
時にあやうく思えるほど真摯で。
Coccoはいつだってまっすぐに、
彼女にとっては「こうするしかない」というところで
生きているのだろう、ということが伝わる。

心に寄り添う、というには少し遠い。
時に馴染みの無い、けれど美しい生き方に触れ、
自分の心も優しくなれるといいと思う、
そんな時に開きたい本です。



『こっこさんの台所』
生きることへの想いを
謳い上げるように綴ったエッセイ、
心と身体に沁み入る季節のオリジナルレシピ…。
写真やエッセイから伝わる、
歌うたいCoccoの“愛”のメッセージ。

参考:「BOOK」データベース




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夏目家順路ほか、色んな作家

★4つ。

朝倉かすみさんの『夏目家順路』
最初に登場するのは夏目清茂74歳。
ただ、彼を“主人公”と呼んでいいものかどうか…
だって1章の終わりにはめでたく昇天してしまうのだから。

「いつも、だいたい、機嫌がよろしい」
「いよーし、いっちょやってやるかという雰囲気が立ちのぼる」

夏目清茂さん、一緒にお酒を呑んだら楽しいだろうなあと思える人。
でも、極めて個性的なわけではない、
どこにでもいそうな人でもある。
彼も周囲の人々もどこにでもいそうで、でも、
「どこにでもいそう」な人はやっぱり
誰かにとってはただ1人の人なんだよね。

視点が次々と代わっていき、
本人にしか分からない事情や感情が浮き彫りになっていく。
同じ出来事もちがう人から見たら
まったく別の意味合いを持つものになる。
外から見ただけでは分からない人間の事情を見ることができる、
という小説の醍醐味の1つを
『夏目家順路』ではたくさん味わうことができました。

お葬式のバタバタ感や
よく知らない人のお葬式に出る時の少し複雑な感情、
悲しいだけじゃない
「死」に関する雰囲気がとてもリアル。
誰かの死は悲しいもので、それでもやっぱり、
生きているなら受け止めなければならないことで、
過ぎていくことで。
ずっとずっと昔から「死」を受け入れてきた
人間たちのしたたかさにユーモラスな感じすら受ける。
『夏目家順路』、
「死」の描き方が新鮮で、
暗く重くなることなく楽しんで読める、という感想。

舞台は札幌、夏目清茂はすごく自然な北海道弁。
朝倉かすみさんは北海道出身の方なのかな?
と思ったら札幌在住らしく、身近過ぎてちょっと驚いた。
札幌在住というとつい贔屓目で見てしまうので、
知らずに読んで良かったかも。

今度は思い切り贔屓目で見ながら、ススキノが舞台だという
『田村はまだか』を読んでみようと思ってます。



『夏目家順路』
夏目清茂74歳、
本日脳梗塞のためめでたく昇天いたしました。
「どこにでもいるただひとり」の男の一生を、
一代記とは異なる形で描いた長編小説。

参考:「BOOK」データベース


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西の魔女が死んだほか、色んな作家

★3つ。

同じように「おばあちゃんと孫」を描いたものでも、
心に響くもの、まったくそうでないものがあるのはどうしてだろう。
おばあちゃんと孫の心が伝わってくるかどうか、
そのおばあちゃんと孫が好きかどうか、が
自分にとってのポイントなんだろうな、とぼんやり思いました。

梨木香歩さんの『西の魔女が死んだ』
号泣ではないけどじわっと来たのは
「西の魔女」ことおばあちゃんがわりと好きだったからだと思う。
自ら「オールドスタイル」という、
おばあちゃんの自然とともに生きる暮らしに憧れを感じます。
その独特な生き方論も、私には納得いくし、好きなもの。
自分もおばあちゃんに習って
「魔女修行」をしたいなあと少し思いました。
外からの刺激に(滅多に)動揺しない
自信に溢れた生き方…私には少し足りないもの。
このおばあちゃんの暮らし、いいなあ、と思ったから
ラストでじわっと来たのだろう。

その一方、おばあちゃんも主人公である孫のまいも
理路整然としていて少し現実味が足りないように感じた。
おばあちゃんはまだ「魔女」だから、と納得することができたけど
まいはあまりに筋が通り過ぎている、というか。
中学生の彼女が抱える人間関係や「死」についての悩みは
まったく分からないというわけではないけれど、
言葉遣いや考え方が中学生にしては不自然にきれいで。
意志が弱い、って彼女は自分で言ってるけど
実は相当強いし、繊細できちんとした子。
自分が中学生の時にこういう子が同級生だったら、
ちょっと近寄りがたいかも、という感想。

登場するおばあちゃんと孫、
両方とも好きなら号泣、そうじゃなければ…という感じ。
おばあちゃんは少し好きで、
孫のまいにはそれほど感情移入できなくて、
だからじんわり止まりだったのだと思う。
おばあちゃんがまいを思う暖かい心と、
まいが後悔しつつおばあちゃんがやっぱり大好きだ、
と思う気持ちには泣けたけれど。

私が号泣する「おばあちゃんと孫」話は、のび太のおばあちゃんの話。
のび太も、のび太のおばあちゃんも、大大大好きだー。



『西の魔女が死んだ』
中学に進んでまもなく
学校へ足が向かなくなった少女まいは、
ひと月あまりを西の魔女こと
ママのママのもとで過ごした。
大好きなおばあちゃんから
魔女の手ほどきを受けるまい。
修行の肝心かなめは
何でも自分で決める、ということだった。
喜びも希望も、もちろん幸せも…。

参考:「BOOK」データベース


 

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猫だましいほか、色んな作家

★4つ。

人間の「心」と「体」の間にあるものとして「たましい」が存在する、
と考えることは極めて有効である…と語る河合隼雄さん。
たましいを現すものとして「猫」に焦点を当て、
さまざまな物語に登場する猫について
心理療法家の視点から語っています。

心理学についての教養はほとんど、まったく、無いけれど、
河合隼雄さんと村上春樹さんの対談集
「村上春樹、河合隼雄に会いにいく 」を読んで
河合隼雄さんの話は親しみやすくて納得できる…と感じていました。
その河合隼雄さんと猫が結びついたなら
これが読まずにいられましょうか。

人間に「たましい」が存在するのかどうかは分からない。
けれど、「心」と「体」に人間を分けてしまう合理的な考え方は
人を形づくる大切なものを失ってしまう、という説は分かる気がします。

長靴をはいた猫、空飛び猫、100万回生きたねこ、昔話に登場する化け猫…
かわいかったり怖かったり、神さまだったり化け物だったり、
『猫だましい 』に登場する物語の猫たちは実に多様。
それって実は人間が
自分の「たましい」の多面性を鏡のように映しているのだ。
猫に関連づけて「たましい」について語り、
人が生きていく上でのヒントとなるものを見いだそうとしていく
河合隼雄さんの話は
分かりやすく面白く、また頷けるもの、という感想です。

あとがきによると、河合隼雄さんは
決して猫派ではないんですって(犬派でもないそうですが)。
 
 無関心に近いにもかかわらず、猫の方は私を好きらしく、
 猫を飼っている家に行くと、猫の方から寄ってくることが多い。
 P220あとがきより

構われすぎることが嫌いで静かにしておいてくれる人に寄っていく、
という猫の性質が現れているとともに、
河合隼雄さんは心理療法家として悩みを抱えている人間に対しても
近寄りすぎずにそっと見守ってくれていたんじゃないかなあ、
と思えるエピソード。

 たましいは広大無辺である。
 それがどんなものかわかるはずもない。
 従って、何かにその一部の顕現を見ることによって、
 人間は「生きる」という行為の支えを得ようとする。
 …猫は、どういうわけか、人間にとってたましいの顕現となりやすい。
 猫を愛する人は、猫を通じて、
 その背後に存在するたましいにときに想いを至すといいのだろう。
 P217-218

猫を通して、自分の姿を見ることができるかもしれない。
どんなに怖ろしく描いてもそれを受け入れ、「人間」の姿を見せてくれる。
そんな多様性もまた猫の魅力なんだよなあ、
と「猫を愛する人」としては思うのでした。



『猫だましい 』
猫物語を心理療法家の眼で解読すると、
人間の姿がくっきり見えてくる。
長靴をはいた猫、空飛び猫、
日本の昔話、宮沢賢治の童話…
たくさんの「猫たち」が顕われる、
豊穣なる河合隼雄の世界。

参考:「BOOK」データベース


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ベーグル焼いたり、本読んだり。

備忘録といいますか、
読後に自分の中に湧く気持ちを言葉にして、
ついでにブログにしてみました。

ベーグル焼いて売るのがお仕事。

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