★4つ。

穂村弘さんの『世界音痴』を読み終わった最初の感想。
なんって、ダメな人なのかしら、この人ってば。

総務課長代理の肩書きを持ってはいるものの、
家ではベッドに寝そべって菓子パンをむさぼる。
社員旅行で同室の人と話すことができなかったり、等々、
引いてしまうくらいのダメっぷりがあまりにも赤裸々。

「世界音痴」と自分を定義し、世界とうまく関われないと言いつつも
それでも少しは関わりたい…と時々そっと手を伸ばしてみては
やっぱり駄目だ、と手を引っ込める、
そんな孤独な姿が痛々しいけど笑えてしまう。
しかしそのダメさが、程度はあれど自分の中にもある、
と感じてしまうと「しょうがないなあ」と見守りたい気分になってゆく。

しかしそのダメっぷり、
果たしてどこまで本当か?という疑いがつきまとう。
エッセイのほかに、妄想を突っ走らせた摩訶不思議な文章があり、
両方読んでいると、エッセイのほうもフィクションじゃないのか…
という気がしてくるのです。
「ダメだなあ、この人」なんて笑っている読者は
穂村弘さんの思惑通りに騙されているだけなんじゃないのか…
と思いつつ、嘘か本当かよく分からないそのカオスを
いつの間にやら楽しんでしまっている。

楽しんでいると、時にどきんとする言葉に出会う。

 大トロのパック(半額)を手にとって、
 買おうか買うまいか、迷っているとき、不意に「ああっ」と叫びたくなる。
 「人生って、これで全部なのか」

何気ない日常の中に不意に見え隠れする絶望は、
目の前に突きつけられると少々ずきんとくる類のもの。

痛々しいほどのダメっぷりと妄想の摩訶不思議さ、
そして時折り放たれる心の奥底をえぐるような言葉に、
穂村弘さんがどうにも引っかかってしまう存在となってくる。

ところどころに挟まれる短歌がまた印象深い。
少しずれた光景を歌っているように見えても
実は穂村弘さんが見つめている光景がぎゅっと凝縮されている。
つい長々と言葉を連ねてしまいがちな私は、
短歌という定型の中で感情や情景が現されることに憧れを感じます。

穂村弘さんは今ではご結婚されているそうです。
どこまで嘘で本当なのか、本当に“ダメ男”なのか、
なんだかまだよく分からなくて、
それゆえにほかの著作も色々読んでみたくなりました。



『世界音痴』
末期的日本国に生きる歌人、穂村弘
(39歳・独身・総務課長代理)。
母親が置いた菓子パンをベッドでむさぼり食い、
青汁ビタミン服用しつつ、ネットで昔の恋人捜す。
「世界」に憧れつつも「世界」に入っていけない
「青春ゾンビ」の日常と心情を赤裸々に綴る、
爆笑そして落涙の告白的エッセイ。

参考:「BOOK」データベース/
出版社・著者からの内容紹介

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