★4つ。

読了2冊目にして、京極夏彦作品の中では
“異色”と呼ばれるものに手を出してしまいました。
近未来の設定は、ネットや月刊アニメージュなどで
読者から公募したもの。
現実味が無いような、でももしかしたらホントにこうなるかも…
というような、奇妙にリアルな世界。

同じ年代の子供とほとんど接しないで暮らす状況に、
こんな世界ちょっとイヤ…と感じたのは
登場人物が言う「20世紀生まれ」だからかも。
細かい描写と相まって
前半部分はあまり気持ちが入っていかなかった…
けど、後半はテンポアップして事件がどんどん予想外の方向に。
いつの間にやら、真相が知りたくてたまらなくなってしまってました。

登場人物にも愛着が湧く。
個性はあれど、孤独で冷淡であることは
共通していた21世紀の少女達。
子供の心など分かる筈が無い、と言い切るカウンセラー。
20世紀生まれで時代についていけてない刑事
(この人にだけは最初から親しみが)。
彼女達がリアルな生を感じ、闘いを通じて逞しくなり、
感情を見せていく姿は胸を打ちます。
世代の差で理解しづらいところがあっても、
人間であることに変わりはない、と思えて応援したくなる。

京極夏彦作品をほかに1冊しか読んでいないせいか、
違和感を感じることはありませんでした。
前半の長い説明、それを超えると一気にのめり込むこと、
登場人物に愛着が湧くこと。
舞台が“少し昔”でも“少し未来”でも、
匂いのようなものが共通しているという感じ。

タイトルのルー・ガルーとは、
中世ヨーロッパにおける狼憑きの意。
妖怪が登場する訳じゃないけど
どことなく妖怪がモチーフになっている、
そこも京極夏彦作品らしいところではないかと。

ルー・ガルーとは何者なのか?
それが気になってたまらなくなる小説。
好き嫌いはやっぱり分かれると思うけど、
長さに尻込みせずチャレンジする価値あり。
 
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2030年代の都市。
データ管理が進み、人はみな端末を持ち歩き、
全ての行動は把握されている。
世界はモニタの中だけに存在していた。
そんな均一化された世界で
14~15歳の少女だけを狙った
連続殺人事件が発生。
リアルな死によって現実に目覚めた、
少女達の闘いが始まった。

参考:「BOOK」データベース
『ルー=ガルー 忌避すべき狼』

★5つ。

村上春樹さんが「走る」ことについて語ったエッセイ。

25年にわたって世界各地でフルマラソンや100キロマラソン、
トライアスロンを走ってきたランナー・村上春樹が
走ることで自分の生き方や小説がどのように変わったのか、
を真正面から語っています。

「走ることについて正直に書くことは、
僕という人間について(ある程度)正直に書くことでもあった。
…だからこの本を、ランニングという行為を軸にした
一種の『メモワール』として
読んでいただいてもさしつかえないと思う」(前書きより)

ふざけたもの・旅行もの・真面目に語っているもの、
村上さんのエッセイはほぼ全て読みましたが
これほどまで真摯に「自分」というものを
考察した文章は初めて読みます。
25年間、苦しい思いを何度もしながら
それでも走り続けることで築かれた「何か」が
村上さんの小説世界と密接に関係しているのだ、と深く納得。
その「何か」を垣間見ることができるのはファンとして嬉しい。

「老い」を受け止める村上さんの、
その受け止め方にしみじみ感じるものがありました。

走ってきたことを振り返ることで今までの人生を、
そしてタイムが遅くなってきたことで
「老い」を見つめている村上さん。
焦らず後悔せず、人生の悪いところや喜ばしくないところ、
これから老いていくことも全て「そういうものだ」と受け入れている、
その姿勢は今までのエッセイでも好感を持っていたところですが
この本では一層それが表に現われているような。

自分もこのように「老い」を受け入れられたらいいな。
走るのは大大大の苦手なのでマラソンはまずしないけど、
村上さんにとってのマラソンのような「何か」を
自分も続けたい、と思う。

ランナーが読めば体で納得できるであろう文章。
私は頭で想像してみるだけだけど、
文章にしてくれたことに感謝です。
 
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1982年秋、専業作家としての生活を開始した時、
彼は路上を走り始めた。
それ以来25年にわたって世界各地で、
休むことなく走り続けてきた。
走ることは彼自身の生き方をどのように変え、
彼の書く小説をどのように変えてきたのだろう?
走ることについて語りつつ、
小説家としてのありよう、創作の秘密、
そして「僕という人間について正直に」、
初めて正面から綴った書下ろし。

参考:「BOOK」データベース
『走ることについて語るときに僕の語ること』


★4つ。

推理小説のようだけどいわゆる“トリック”はなく、
怪奇小説のようだけど妖怪は出てこない。
それでも怖くて面白い。

登場人物の「京極堂」が語る長い話は難しいけど、
納得できる部分も多々あり。
なんとか分かった気になって読み進めれば、
後は展開が気になって気になって一気読み。
終わってみれば長い話は絶対に必要なものだと納得。
因習に縛られる人々の悲しさが印象的でした。

風変わりで魅力的な登場人物達の多くは
この後の京極堂シリーズにも続けて登場するそう。

京極堂シリーズとか百鬼夜行シリーズ、とか呼ばれるものの第一作。
ハマる人とハマらない人にきれいに分かれそうだけど、
私はハマりそうな予感。




この世には不思議なことなど何もないのだよ-

古本屋にして陰陽師、京極堂が
憑物を落とし事件を解きほぐす。
東京・雑司ケ谷の医院にまつわる奇怪な噂。
密室から失踪した娘婿、
その妻である娘は20ヶ月も身籠ったまま-。
文士・関口や探偵・榎木津らの推理を超え
噂は意外な結末へ。

参考:「BOOK」データベース
『姑獲鳥の夏』(うぶめのなつ)