★4つ。

人情味のある暖かさと、
深刻な様相を見せる事件。
2つが軸になっているところは「しゃばけ」と共通しているけれど
こちらのほうが若干、暗いほうに傾いている印象。
妖怪が出てこなくて事件に絡んでくるのがすべて“人間”だからかな。

弓月が夢告の度に血を吐いたり、描写も少し生々しい。
でも、のんびり屋の兄としっかり者の弟の互いを思う気持ちは
やはり畠中さんらしい暖かみが感じられます。

ラスト付近で話は大きく展開。
事件を解決するだけではなく
幕末という社会が激しく変わっていく時代に人はどうあるべきか、
といったところにまで話が及んでいきます。
そこまで話が大きくなるとは思っていなかったので少々驚きましたが、
諦めて投げやりになるのではなく変えられないものを受け入れ、
その中で生きる希望や喜びを見出そうとする人々の姿は好ましい。

ほのぼのした「しゃばけ」シリーズもよいけど、
このくらい暗いの、けっこう好み。
 
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江戸にある小さな神社の神官兄弟、弓月と信行。
弓月には夢で真実を見る「夢告」の能力があるが、
見たいものを見ることができず
いまいち役に立たない。
しかしその能力を頼り、とある依頼が舞い込んだ。
やむにやまれず引き受けたのだが、
事件は思わぬ展開に…。
依頼は解決できるのか、
そして、果たして兄弟は無事に帰れるのか。

参考:「BOOK」データベース 『ゆめつげ』

★5つ。

京極堂シリーズの2作目。
「姑獲鳥の夏」で登場した人物たちの個性がより際立ちます。

題材は気持ち悪くて、グロテスク。
なのに何故か、
「みっしりと詰まった匣」のイメージが頭にこびりついて離れない。

推理小説としてはトリックに無理があると思う。
けれどトリックより何より、“それ”をしてしまうに至った人々の
心の動きが奇妙に説得力があり、悲しくてグロテスクで…
そして、怖ろしいほど歪んではいるけど「美」や「愛」を感じてしまう。

どんなに怖ろしい犯罪を犯していても
京極堂シリーズの登場人物たちにはどこか人の「情」というのか、
人間なんだなあ、と思える部分があります。
犯罪を犯した人と犯していない人は、
正気と狂気との間にある薄い幕1枚で隔たれているだけ。
でもそれって本当に、この小説の中だけの話?
なんて思ってしまって鳥肌が立つ。
自分の中にもその幕があるのがぼんやり見えて、怖ろしい。

京極堂の台詞、「幸せになるのは簡単な事だ」「人間をやめればいい」。
人間やめたくないので、京極堂シリーズを読むだけにします。
 
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匣(はこ)の中には綺麗な娘がぴったり入ってゐた。

箱を祀る奇妙な霊能者。
箱詰めにされた少女達の四肢。
そして巨大な箱型の建物―
箱を巡る虚妄が美少女転落事件と
バラバラ殺人を結ぶ。
京極堂は果たして憑物を落とせるのか。

参考:「BOOK」データベース
『魍魎の匣(もうりょうのはこ)』

★4つ。

時代物でお馴染み、畠中恵さんの現代物。
連作短編集です。

缶を開けると起こるのは、開けた人にとって直視したくない現実。
見たくないものを見てしまう「不幸」、
でもそれを乗り越えることで幸福に近づけるという「幸運」。

酒場の店長と常連客たちの距離感が心地いい。
口が悪くてお互いからかったり喧嘩したり、
けれど本当は心配し合って、“不幸な幸運”を乗り越える手助けをするのです。
普段は干渉し過ぎずに困った時は手を差し出す、
大人の友人関係がほんのり暖かい。

畠中さんは2冊目、時代物のほうが人気があるようですが
全体に流れる暖かさは「しゃばけ」とも共通してる印象。

開けた人がどうなるのか、常連客たちと一緒に心配する気持ちに。
短編だからか、解決法にちょっと無理があるな、と感じる話もあるけど
全体として暖かく心地よく読めました。

「酒場」という名の酒場、クセモノばかりだけどちょっと行きたい。
 
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ちょっとひねくれているけれど
料理自慢で世話好きな店長のいる
「酒場」という名の酒場。
店長の娘やクセモノ常連客が、
100円ショップで売っている
「とっても不幸な幸運」という名の缶を開けていく。
開けると起こるちょっと不思議な出来事は
開けた人の運命をちょっと変えてしまう…。
缶の中にあるのは「災い」?それとも「幸せ」?

参考:「BOOK」データベース
『とっても不幸な幸運』

★3つ。

スピード感のあるストーリー。
「不夜城」のほうが評価が高いらしいけど、
初めて読んだからハラハラ感は充分。
死ぬか生きるか、極限の状態で主人公がどんな行動を取るのか。
途中で結末が予想できてしまったけど(あれしかないよなあ、という感じ)
それでも最後まで息を詰めて読みました。

けれど、あまりにも痛々しくて。

過酷で非情な世界に生き、エゴと欲望丸出しの登場人物たち。
そうでなければ生きられなかった彼らは
悲しくて痛々しい…でも、
自分の欲望のために人を利用する彼らに愛情は持てない。

自分自身のエゴを見るようで苦しくなってしまうのです。

自分の好みとしては小説は救いがあって欲しい、
人の暖かい部分が少しでも描かれていて欲しい。
人間の持つ黒い部分がこれでもかとばかりに描かれていて
すごい話だなあ、とは思うのだけど。
 
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タイ生まれの日本人・十河将人は
人買いを生業としている。
彼はバンコクで再会した幼馴染から
中国人の女を国外に連れ出す
仕事の依頼を受けた。
おそらく女は売春婦。
将人にとっては簡単でおいしい仕事の筈だった。
しかし、その女と接触してから
複数の敵に狙われる羽目に…。

参考・「BOOK」データベース 『マンゴー・レイン』

★4つ。

西原理恵子さんのマンガを1冊きちんと読んだのは初めて。
ちらちら立ち読みしていた印象だと
毒がすごい、けど時々切なくて泣ける。

「毎日かあさん カニ母編」はまさしくイメージ通り。
息子のとんでもない行動にキレたり
カニを1人占めして子どもを泣かせたり、
子育て漫画ではあっても“ほのぼの”とは決して言えない。
でも時々、胸の奥に静かに残るような切ない情景が描かれてたりする。

幼児教育の先生からはぜったいに褒められないだろうけど、
西原さんのお子さん達への愛情はめいっぱい感じます。
それから、「最初あった時から酒乱だった」
元旦那さまとの心のつながりも。

子育て中の方が読んだら、笑って共感して、それから泣ける。
女の子は小さい時から女の子、
男の子は…大変だ。
 
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西原理恵子さんの家族絵巻。
毎日新聞に連載されていた漫画に
書下ろしを加えて1冊にしたもの。
「家庭円満マンガを描いていたら、
連載中に離婚してしまいました(笑)」(本人談)

参考:「MARC」データベース
『毎日かあさん カニ母編』


★4つ。

子供の頃から鍛えられた筋金入りのスリと、
ギャンブル狂で家賃も払えない女装の占い師。
状況だけ考えると反社会的な2人だけど
悩んだり苦しんだりしている心情が
細やかに描かれていて、肩入れしたくなるのです。

周囲の人々もみんなが深みを持っていてそれぞれ気になる。
占い師の元に度々訪れる1人の少女の悩みはなんなのか、
救ってあげることはできないものか、
と占い師と一緒に心配になってしまう。
スリを心から心配する家族代わりの人たちや
一本筋が通っている古き良き時代の“スリ一家”の人情が
物語全体を暖かいものにしています。

その一方、起こる事件の展開にハラハラ。
前半のどこか暖かい雰囲気から後半は急展開するので
うわ、この人たちにこんなことが起こるなんて…!と軽く衝撃を受け、
事件が早く円満に解決してくれないかと息を詰めて読みました。

オススメ度4つなのは、ラストでもう少し語って欲しかったから。
事件に関わった人々がどうなったか、
大体は分かるけどそれぞれの気持ちも知りたかったな。
それだけ登場人物に感情移入してしまっていたのかもしれませぬ。
 
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出所したばかりのスリは家に戻れなかった。
オケラになった占い師は途方にくれていた。
何かに導かれるように
ひとつ屋根の下で暮らし始めた2人は、
身も心も引き裂く嵐に巻き込まれていた。

参考:「MARC」データベース『神様がくれた指』


★4つ。

時代物はそんなに読みませんが、妖怪ものはけっこう好き。
人とはちがった論理で存在する“妖怪”に何か興味があるのですな。

この話に出てくる妖怪たちは人情味あふれてなんだかかわいい。
ずっと若旦那に付き従う2人(2匹?)の大妖怪は
心配するあまり超過保護。
小さくていっぱいいて若旦那に褒めて欲しくてたまらない家鳴、
ひねくれた態度を取るけど
本当は若旦那が大好きな屏風のぞき、など
出てくる妖怪たちは個性豊かで色とりどり。
しかし、人間くさくてかわいい…と思っていたら
「若旦那以外の人間はどうでもいい」という冷淡な行動や
ほかの人がいても(若旦那以外に妖怪は見えないのです)
平気で騒ぐところ、やっぱり人間とは違う、と時々気付かされ
そのギャップがひやっと来たり滑稽だったり。

妖怪に囲まれた若旦那のほのぼのとした“日常”と
謎が複雑に絡んだ“事件”と、
トーンが違う2つの軸が絡み合っているところが話の魅力。

妖怪たちの特徴が頭の中に絵として浮かぶ文章と
テンポのよいストーリー。
事件の謎がすっきり分かって楽しんで読めました。

“妖怪”と聞くと思い浮かぶ暗い印象が希薄なのは
若旦那を思う気持ちが全体に流れているからだと思う。
妖怪ものは暗さに惹かれて読むことが多いので
シリーズの続きを読むかどうかはまだ分からない、けど
こんな妖怪たちもいいな、と楽しみました。

妖怪・人情・推理、様々な要素を楽しみたい方、おススメ。
 
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江戸有数の薬種問屋の一人息子、
一太郎は体が弱くすぐ寝込んでしまう。
そんな若旦那の周囲はなぜか妖怪だらけなのです。
心配するあまり口うるさい妖怪たちの
目を盗んで出かけた夜、
若旦那は人殺しを目撃してしまう。
それ以来続く猟奇的殺人事件に
若旦那と妖怪たちは関わっていく。
日本ファンタジーノベル大賞優秀賞。

参考:「BOOK」データベース『しゃばけ』