★3つ。

恋愛について、人生について、すごく素直に綴られたエッセイ集。
角田光代さんが生きることを楽しむために
どんなふうな心持ちでいるか、が分かります。

何にもとらわれていない人、という印象。
恋愛についても人生についても
古風なわけでも自由奔放なわけでもなく、
ちょうどその中間にいるような。
自分の周りにはこういう考え方の人はいない(と思う)ので
“共感”というよりは、こういう考え方もあるんだなー、と新鮮な感じ。

それでも自分とまったく相容れないわけではなく
人間はちがうようでいても、どこか淋しさを抱えながら
一生懸命生きているのは一緒だな、と思えました。
そしてところどころ、
そうかそう考えれば楽になるな…と思える言葉が。

「プータローが増えた増えたと言うけれど、
自分の人生にありがとうと言いたい人が
増えただけじゃないかと思ってしまう。」

人生を楽しんでいるけれど、
どこか淋しさがつきまとう感覚は小説の雰囲気とよく似ています。
廃墟ビルに入ってみた話、
小説の中にこのシーンが出てきたなあ、となぜかうれしくなったり。

これが初エッセイで、書いた時角田光代さんは24歳。
まだ学生感覚が残っている、
どこかに行く途中のような若さが感じられます。
このエッセイを書いた若い女性がどんなふうに大人になったのか、
次は角田光代さんの最近のエッセイを読んでみようと思いました。 



『愛してるなんていうわけないだろ』
空き地で花火をして大声で笑い、
言えなかったことや悲しいことを手紙に書き-。
時間を気にせず靴を履き、
いつでも自由な夜の中に飛び出していけるよう…
恋人のもとへ、タクシーをぶっ飛ばそう!

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★4つ。

衣食住の中で大切にしたいものは断然、食。
だから「食」を大切に描いている本にはついつい惹かれてしまうのです。

作者の向山昌子さんが
アジアの台所に入り込み、食を通じて人々と交流していく。
レストラン巡りではなく、普通の人の普通の台所をのぞく旅行記は
色々な国の食生活とそれを中心にした暮らしが垣間見えて楽しい。
ガイドブックには載っていない、生の人間が見えるようです。

向山昌子さん、すごーくパワフルな人かと思ったら、
体が弱くて日が暮れるまでホテルの部屋にじっとしていたりする。
だけど言葉もよく分からない国で現地の人と友達になったり、
地元の人が行く市場に通ったり、か弱いようなパワフルなような、
こんな旅の仕方もあるんだなーと感心してしまいました。

イラストをまじえて紹介されているごはんも美味しそうだけど、
向山昌子さんがアジアで学んで実践している
シンプル生活に心惹かれます。
タイの屋台を参考にした、最小限の道具しかない台所。
ハプニングも楽しむ「いきあたりばったり」の精神。
なかなかこんな風にはできないけど、
気持ちだけでも余計な物を持たずにすっきりと暮らしたいな。

こんな感じのアジア旅行、自分で行くのはちょっと大変。
だけど向山昌子さんの旅から学べることはたくさん。
旅行に行きたい、というよりはこんな風に暮らしてみたい、と思います。



『アジアへごはんを食べに行こう』
私の元気の素は、ごはんです!

1番好きな場所は台所。
力を抜いて自然に生きる大切さを、
アジアの旅で学んだ。
身体に優しい食べ物、モノを増やさない工夫。
バックパックの旅と同じように暮らせれば最高。
アジア的シンプル生活のヒントが満載。

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★4つ。

『乱紋』の中心人物は徳川秀忠夫人・おごう。
おごうに仕える侍女おちかの目線で描かれています。
不思議なほど感情を表さないおごうに対し、
おちかは現代に生きてもそう違和感はない感覚の持ち主。
彼女と一緒に「おごうは一体何を考えているの?」と
不思議になってしまいます。

けれど、壮絶な運命に翻弄される彼女が
何も感じていないわけは無いわけで。

2度目の夫が戦死した時、おちかに言った言葉が
珍しくおごうの感情を表しています。

「私の側にいた方、私をいとしんでくださった方は、みないっておしまいになります」

永井路子さんは付記で
「水が器の形に従いながらも、したたかに存在しつづけるように、
彼女はしぜんに彼女なりの生き方を選びとっていたのではないか」
と語っています。
永井路子さんが描いたおごうは、
すべてを受け入れて生きていく静かな強さを持った女性です。

また永井路子さんは、2人の姉を自己主張の激しい女性として描き
おごうとの違いについて
「戦国時代まで、女性は財産権と、それに裏づけられた発言力を持っていた。
…が、家康の時代になると、急速に女は権利を制約され、
みるみるもの言わぬ存在に変わってしまう。
その象徴的な存在がおごうではないのか。
いわば女性史の分水嶺を越えたところに、彼女は佇んでいるのだ。」
と語っています。
永井路子さん独特の女性の側に立った視線で、
日本の女性が背負った運命の1つの形が浮かび上がってきます。

プライドが高く決して頭を下げないお茶々、
一見卑屈に見えようとも願望のために上手く立ち回って周りを利用するお初、
感情が無いと思えるまでに淡々と全てを受け入れて生きていくおごう。
本当に強いのは一体誰なのか。
「もの言わぬ存在」だった女性の姿を浮かび上がらせて
現代に生きる我々にも感銘を与えてくれる1冊です。



『乱紋』
織田信長の妹・お市の方には3人の娘がいた。
長女お茶々は豊臣秀吉に嫁ぎ、
秀頼を産み淀君と呼ばれる。
次女お初はかつての名門・京極家に嫁ぎ、
再興させようと立ち回る。
そして三女おごうは過酷な運命の果て、
徳川二代将軍秀忠夫人に…。
戦国の歴史を左右した華麗な系譜を描いた大作。

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★4つ。

京極堂シリーズの『姑獲鳥の夏(うぶめのなつ)』から
『塗仏の宴―宴の始末(ぬりぼとけのうたげ うたげのしまつ)』まで、
本編では語られていなかった事件の発端や
背後で起こっていた出来事などが描かれたサイドストーリー。

短編の主人公となっているのは
本編での“犯人”やほとんど語られていない脇役、
登場していない人物まで様々。
印象的なのはやはり、本編でも重要だった人物の話。
この人にこんなものが憑いていたなんて…と怖ろしい気持ちに。

「鬼一口」に登場した人物にはびっくり、
まさか “あの本”に出てくる“あの人”だなんて!
さすがは京極夏彦さん、
複雑怪奇に絡み合った人間関係に驚かされます。
それから、最後の短編「川赤子」はおなじみの関口巽が主人公。
『姑獲鳥の夏(うぶめのなつ)』が始まる直前の
彼の心情はとても興味深い。

憑き物を落とす本編とは逆に、
『百鬼夜行 陰(ひゃっきやぎょう いん)』では
人に“妖怪”が憑いてしまう瞬間が切り取られています。
京極堂に憑き物を落としてもらえた人はまだ良かったんだ、
憑かれたままの人がこんなにいるんだ、
と思うと背筋が寒くなる。
誰だっていつ何に憑かれてしまうか分からない、
という妙な不安感が湧いてきます。

妖怪が憑くさまの恐怖感はこの本だけ読んでも感じられるけど、
本編を読んでからのほうがやっぱり楽しめると思います。
『塗仏の宴(ぬりぼとけのうたげ)』まで読了済みならぜひ。



『百鬼夜行 陰(ひゃっきやぎょう いん)』
揺るぎ無いはずの「日常」が乱れる時、
人の心の奥に潜む「闇」と直面する。
精神の内からわき出る「妖怪」という名の怪異。
他人の視線を以上に畏れる者、
笑うことができない峻厳なる女教師、
海に強い嫌悪感を抱く私小説家…。
人が出会う「恐怖」の形を
多様に描き出す十の怪異譚。

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★5つ。

“天然”という言葉すら超越した素直さで、
身の危険には“おともだちパンチ”で立ち向かう闘志を持ち、
“オモチロイこと”に無我夢中になる強い好奇心があって、
お酒を飲ませればまさしく底無し。
強烈なインパクトの持ち主なのに
自分が個性的だなんてちっとも思ってない、
「黒髪の乙女」がとってもかわいいっ。

そして「黒髪の乙女」に恋してしまった「先輩」は
男臭い妄想にどっぷり浸りながらも相当純情。
“ロマンチック・エンジン”が稼動してしまうともう止まらない。
古本市で彼女と同じ本に手を伸ばして、
なんてコテコテな妄想を真剣に考えている「先輩」、
ヘンな人だけどやっぱりなんだか可愛げがある。

『夜は短し歩けよ乙女』
「先輩」と「黒髪の乙女」が代わるがわる語る構成。
どちらも森見登美彦節、
格調高い言葉でばかばかしいことが大真面目に語られていて、
じわじわ笑えて癖になってしまう文章なのです。
日常からいきなりファンタジーに飛んでしまう不思議な世界、
唐突に感じて戸惑うところも。

それでもこの文章、この世界、この癖がなんとも好きです。
第1章から第4章、春夏秋冬と過ぎた1年。
それぞれの季節感が
ありありと感じられるのもいいところ。

1年を過ごした「先輩」と「黒髪の乙女」、
彼らの今後もちょっと気になるところです。



『夜は短し歩けよ乙女』
私はなるべく彼女の目にとまるよう心がけてきた。
「偶然の」出逢いは頻発した。
我ながらあからさまに怪しいのである。
「ま、たまたま通りかかったもんだから」
という台詞を喉から血が出るほど繰り返す私に、
彼女は天真爛漫な笑みをもって応え続けた。
「あ!先輩、奇遇ですねえ!」
キュートで奇抜な恋愛小説in京都。

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★4つ。

妖力を失いながらもプライドだけは捨てられない天狗、
屈折した悲しさを傲慢な態度で抑え込む「弁天」、
そして個性的な狸たち。
森見登美彦さんの『有頂天家族』
三者三様、それぞれがよく描き分けられているなあ、と感心しきり。

大真面目なばかばかしさに呆れながらも笑ってしまい、
登場人物(人、じゃないほうが多いけど!)に愛情が湧いてくる。
特に後半、怒涛の勢いで暴れまくる変幻自在の狸たちに
読んでるほうまでぶんぶん振り回されてしまいます。
下鴨一族の家族愛、弁天や赤玉先生の孤独に時々ほろっとさせられる。

森見登美彦さんの他の話のような男臭さを予想していたら、
ドタバタ感が強くて話自体はちょっとあっさり感じました。
『太陽の塔』『四畳半神話体系』のほうが好みだけど、
『有頂天家族』を先に読んでいたらちがった感想だったかも。

「面白きことは良きことなり!」狸の本質を表す言葉。
難しいこと考えないで、
狸のように生きることを楽しみたい時に読みたい本。
どうやら続きもあるらしいので、それも楽しみです。



『有頂天家族』
偉大なる父の死、海よりも深い母の愛情、
落ちぶれた四兄弟…
これ、すべて狸のはなし。
狸の名門・下鴨家の優しき母と
なんとも頼りない四兄弟。
敵対する夷川家、半人間・半天狗の「弁天」、
すっかり落ちぶれた天狗「赤玉先生」-。
狸と天狗と人間が、京都の街を飛び廻る!

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★4つ。

ふとした瞬間に滑り落ちる“すきま”。
大切なともだちがいて、
ずっとそこで暮らしていたような懐かしさがあって…
でも、行くのも帰るのも自由にはできない。

江國香織さん著、こみねゆらさんイラストの
『すきまのおともだちたち』
ファンタジーではあるけれど
不思議な世界で冒険をするわけではなく、
穏やかで優しい日常といろいろな違いを乗り越えた友情が
じわっと心に沁みてきます。

子どもの頃からの友人はいても、子どもの時の友人には2度と会えない。
当たり前で少し淋しくて、素敵なことであるはずの“変わっていくこと”が
“すきま”では当たり前ではなくて。

「過去の思い出って淋しいのね。それに悲しい。
じれったくもあるし、絶望的でもある」(本文より)

変わること、変わらないこと、どちらが淋しいことなんだろう。
少し切なさを感じる不思議な友情を味わいに
“すきま”に落ちてみたくなりました。

こみねゆらさんの淡い絵と
江國香織さんの淡々としているのに優しい文章がぴたりと合って
読む人を“すきま”に連れて行ってくれます。

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『すきまのおともだちたち』
『MOE』連載に加筆・修正。挿絵はこみねゆら。
「過去の思い出って淋しいのね」
旅先で出会った勇ましい女の子と私との
いっぷう変わった友情の物語。

参考:「MARC」データベース