★4つ。

気づけば今年も大晦日となりました。
ご訪問やコメントを下さった方々、誠にありがとうございました。

さて今年最後の更新は、
久しぶりに読んだ宮部みゆきさんの現代ミステリー。
「誰か」の続編であることを知らずに読んでしまったけど、
独立した話になっているので問題は無し。

「火車」「模倣犯」などの圧倒的な迫力を予想していたら、
意外にもあっさり読めてしまいました。
主人公・杉村三郎が事件に“巻き込まれた”形で、
大変な目には合うけれど
事件とは他人、という印象があるからでしょうか。
少し物足りなさも感じたけど、
宮部みゆきさんはわざとそういう人物を主人公にして
事件を少し離れた視点から見る物語を書きたかったのかなあ、
という気もします。

迫力はちょっと不足だけど、
人の心に潜む“毒”の怖ろしさがじわじわ感じられます。
辛い環境を改善できない自身の無力さ、
“自分だけが辛い”という思いは
心の中に積もり、腐って、身を蝕む毒となってしまう。

毒に冒され、過ちを犯してしまった人は悲しい。
だけど過ちに気づいた人はまだよくて、
自分が毒に蝕まれていることに気づいてすらいない人は
反省もできず、どこへも行けない。
自分の中の毒からは目を背けてしまいがちだけど、
時にしっかり見つめないと
毒が全身に回ってしまいかねない、という
うすら寒いような恐怖。

事件は一応解決し、読後感は爽やかではあるけれど
切なさ、もの悲しさが付きまといます。
「火車」などの迫力のほうが好みだけど
毒の怖さが生々しくて、
「名もなき毒」はさらっと読めるけど
実は怖い話かもしれません。

さて、来年も読書感想を綴って参りたい所存です。
よろしければ来年も何とぞよろしくお願い申し上げます。
どうぞよいお年をお迎え下さいませ。


『名もなき毒』
どこにいたって、怖いものや汚いものには遭遇する。
それが生きることだ。

財閥企業で社内報を編集する杉村三郎が
ある理由で訪れた私立探偵・
北見のもとで出会ったのは、
連続無差別毒殺事件で
祖父を亡くしたという女子高生だった。

参考: 「BOOK」データベース

 

★2つ。

京極堂シリーズに登場する、
多々良先生を主人公としたサブストーリー。
妖怪研究のため、日本全国飛び回る多々良先生は
書斎派でなかなか腰を上げない京極堂と対照的な人物。
妖怪のことしか考えてない常識知らずのセンセイと、
多少は常識派だけどやっぱり妖怪好きの沼上のコンビが
行く先々でおかしな事件に巻き込まれます。

事件の中で、天才絵師・鳥山石燕が描いた
妖怪画の謎に迫っていきます。
だから主人公は妖怪馬鹿の多々良先生しか考えられない…
とは思うのですが、癖のある人物がたくさん登場する本編の中で
多々良先生はあんまり印象強くなかったのだよなあ…。
主人公となっているこの本を読んでも、
変人ではあるけれど正直あんまり惹かれない人物。
語り手の沼上も、「妖怪好き」以外にあまり特徴が無いような。
事件があっさりと解決してしまうのは
『百器徒然袋―雨』でも同じだけど、
あちらの主人公・榎木津はインパクトが強烈だし。

2人が妖怪研究のために訪ねた地方で、
戦後すぐの時代に日本が抱えていた「近代化」という問題が
浮き彫りにされているのは興味深かった。
けれど、どうにも物足りなさを感じてしまう。
“黒衣の男”京極堂が登場する最終話なんて、
もっともっと深い人間の感情がありそうなのに…とちょっと残念。

多々良先生と沼上のやり取りはユーモラスで笑えるけれど、
京極堂シリーズとして読むとちょっと違うな、と感じてしまいました。



『今昔続百鬼 雲 〈多々良先生行状記〉
(こんじゃくぞくひゃっき くも)』

河童に噛み殺された男。神隠しに遭う即身仏-
はたしてそれらは妖怪の仕業なのか?
断言するのは全身妖怪研究家・
多々良勝五郎大先生!
戦後まもなく各地で発生する怪事件に
次々巻き込まれる妖怪馬鹿コンビの大冒険!

参考:出版社/著者からの内容紹介

↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
素晴らしい すごい とても良い 良い

★3つ。

2003年7月から20005年9月まで、
“ささやかな日常”について書かれたエッセイ。
章のタイトルが疑問形になっていて、
友達と話していてお題を出された時みたいです。
「あなたのおうちは散らかっている?」
「服の着分けをしていますか?」
私はどうかなー、と考えながら読んでいると
角田光代さんの言うとおり、お酒なんか飲みながら
だらだらと話しているような気持ちに。

『恋をしよう。夢をみよう。旅にでよう。』を書いた時の
角田光代さんと、今の私はほぼ同じ年。
そのせいか、以前に読んだ『愛してるなんていうわけないだろ』よりも
「そうだよねー」って感じるところがたくさんありました。

お化粧がめんどうなところは同じ、
恋愛の考え方はだいぶちがう、
ごはんを大切にするところは同じで
夏に海に行きたがるところはちがって…
なんて感覚はまさしく友だちと話している時と一緒。
みんな同じじゃない、でもまるきりちがう訳じゃない、
ごくごく普通に女友だちとの会話を楽しんだ気分です。

若さゆえのふわふわ感と、どこか淋しさがあった
『愛してるなんていうわけないだろ』に比べると
肩の力が抜けた雰囲気。
忙しい自分が嫌、と迷ったり悩んだりしつつも
それもまたアリか、と受け入れている緩やかさが心地いい。

「日々というのは、あまりにもあっけなく過ぎるくせに、
過ぎてしまうとずっと遠くにいってしまうものらしい」
(あとがきより)

あまりにもあっけなく過ぎる毎日の中で
浮かんでは消えていく思い。
取り上げられている話題は角田光代さんいわく「くだらないこと」だけど、
それこそが日常ってものだな、と
過ぎ行く日々が愛おしくなるようなエッセイです。



『恋をしよう。夢をみよう。旅にでよう。』
たのしいこと うれしいこと 悲しいこと 怒ったこと
ささやかな日常こそがいとおしい??
「飲み屋のちいさなテーブルで向き合って、
ゆるく酒を飲みながら、あるいはお茶を飲みながら、
だらだらと話をしているように読んでもらえたら、
私はいちばんうれしい。」

参考:出版社 / 著者からの内容紹介

↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
素晴らしい すごい とても良い 良い

★3つ。

三谷幸喜さんがTVに出ているとつい見てしまう。
ドラマや映画はあまり見ないので作品はほとんど知らないのですが
(「やっぱり猫が好き」は好きだったなー)、
ご本人の語り口、真面目な顔してヘンなことをしでかす
あの様がどうにもツボなのです。

でもこのエッセイを読んだら、実は本当にとっても真面目な方らしい。
「人前で話すのが苦手」「宣伝のために一生懸命TVに出ている」
…ホントかな、と疑ってしまうけど
人前に出たからにはなんとかその場を盛り上げようとする、
その必死さが面白いのかも。

奥様の小林聡美さんのエッセイ
マダム小林の優雅な生活」に出てくるエピソードが
三谷幸喜さんの視点から語られていて比べると面白い。
自分をけっこうマヌケな人物として書いている小林聡美さん、
でも三谷幸喜さんから見た奥様は何でもできるしっかり者。
何かと奥様にコンプレックスを感じているのも
ちょっと笑えてしまいます。
でも、奥様をとっても尊敬しているのがよく分かるし
さりげないノロケもけっこうあって、
なんだかこういう夫婦関係もいいな、とほのぼのします。

飼い犬が病気になった時の話なんかはちょっと泣ける。
笑える話もたくさんあるけど、
真面目で気弱で優しい人間性が感じられます。
奥ゆかしい人なんだなあ…と思って、
TVに出た姿を思い出すとそのギャップがまた笑えてしまうけど。



『三谷幸喜のありふれた生活』
妻は女優、2匹の猫と愛犬とび、
仕事で出会う様々な人たち…。
人気脚本家の慎ましやかだが
エキサイティングな日々。

参考:「BOOK」データベース

↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
素晴らしい すごい とても良い 良い

★3つ。

優秀な学歴、由緒ある家柄、誰もが見惚れる美貌。
それらを補ってあまりある傍若無人っぷりと不可解な能力で、
京極堂シリーズの中でも殊に強烈なインパクトを放つ
榎木津礼二郎が大暴れする短編集。

人間の悲しい暗さが全面的に描かれている本編とは違い、
むちゃくちゃな榎木津と振り回される「下僕」たちが笑いを誘う。
そしてめちゃくちゃやっているのに悪は滅びて善(つまり榎木津)が栄える、
ちょっとひねくれた勧善懲悪が痛快に感じます。

京極堂が嫌々引っ張り出されている風情を装いながらも
ノリノリのように思えるところも面白い。
意外と京極堂も悪ノリするのねー、って新鮮でした。
「憑き物落とし」をしたらしい箇所もあるけど
はっきり書かれていないので、
何があったんだろうと想像するのも本編とは違った楽しみ方。
実はこの描かれてない箇所に
どろどろとした人間の情念が存在しているのだろうなあ。

この本で初めて登場した語り手、「僕」がヘンな人物。
誰からも本名を呼んでもらえず、
理由が分からないまま榎木津に従ってしまう。
関口のことを「ああはなりたくない」と言っているけど、
榎木津も京極堂も、関口に対しては友情も感じられないことは無い。
自分のほうがよっぽど振り回されているんじゃ?
その悲惨さがよけいに笑いを誘って、
関口が語り手の時とはやっぱり違う印象です。

とにかく榎木津が大活躍?の
『百器徒然袋―雨(ひゃっきつれづれぶくろ あめ)』。
京極堂シリーズ本編とはずいぶん違うけど、
軽くて笑える雰囲気で面白かった。
榎木津礼二郎ファンなら文句なしに楽しめます。



『百器徒然袋―雨(ひゃっきつれづれぶくろ あめ)』
「推理はしないんです。彼は」。
知人・大河内の奇妙な言葉にひかれて
薔薇十字探偵社を訪れた「僕」。
気がつけば依頼人の自分まで
「名探偵」榎木津礼二郎の
「下僕」となっていた…。
京極堂をも巻き込んで展開する
ハチャメチャな妖怪3篇。

参考:「BOOK」データベース

↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
素晴らしい すごい とても良い 良い