★4つ。

“小説家”という職業だけでは心もとない。
竹林経営の第一人者となることを夢見て(妄想し)、
森見登美彦さんが竹を刈る…ただそれだけの話、なのに
なんだってここまで妙なことになってしまうのか。

小説と同様、エッセイでも妄想大炸裂!
格調高い文章で
大真面目にを阿呆を語る森見登美彦さんに、
ばっかだなあ、この人、とクスクス笑いつつ
愛おしさすら感じてしまう。

万城目学さんのエッセイ『ザ・万歩計』を読んだばかりなので
違いを考えてしまいます。
日常のささやかなことに面白さを見出す万城目学さんに対し、
『美女と竹林』は現実と妄想の境目があいまいで
読んでるほうも半分(以上?)ウソと知りつつ楽しめる。
エッセイというよりも、
森見登美彦さん自身(によく似た人)を
主人公とした小説、というイメージのほうが近いような感想。

エッセイを読む楽しみの1つに
小説では分からない作家さんの素顔が
垣間見えることがあると思いますが、
『美女と竹林』では
森見登美彦さんの素顔はさっぱり分からない。
竹林への不思議な愛情と、
締切に苦しんでいるらしいことは
生々しく伝わってくるけれど。
じわじわ笑える森見登美彦節を楽しむならば面白い。
私は森見登美彦さんの文章そのものが
クセになってしまっているのでかなり面白かったです。

エッセイすらも妄想ならば、
もうとことん妄想の世界で楽しませて欲しい。
今年1月に竹林でかぐや姫もどきを発見し、
独身貴族の地位を引責辞任された森見登美彦さん。
きっとさらにパワーアップした、
さらにハッピーな妄想で魅せてくれるでしょう。



『美女と竹林』
美女に会ったら伝えてくれ。
俺は嫁を大事にする男だと。
妄想と執筆に明け暮れた、
多忙にして過酷な日々。
森見登美彦氏を支えてくれたのは、竹林であった。
美女ではないのが、どうにも遺憾である。
虚実いりまぜて、タケノコと一緒に煮込んだ、
人気文士の随筆集。

参考:「「BOOK」データベース


↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
素晴らしい すごい とても良い 良い

★4つ。

くもって蜘蛛かと思っていたら“雲”でした。
太陽の光をじゃまする毒の雲、
それは大切な恋人の
どうしても我慢できない嫌な部分。

11の短編の主人公たちはそれぞれ、
恋人の変な癖に悩まされています。
その癖に笑ってしまったり、
私ならこれは大丈夫、これは耐えられない、とか
あれこれ思いながら読んでいたけれど
考えてみたら自分だって
生活上の習慣というものはあるわけで、
それは他人から見たら
とってもヘンなものかもしれない。

角田光代さんの小説はいつだってリアル。
『太陽と毒ぐも』の登場人物たちも、
そのかっこ悪さが相当リアルです。
小さな小さなことの積み重ねでうまくいったり壊れたり、
本人にとっては深刻だけどハタから見てると
「ばっかじゃねえのこいつら」(あとがきより)
と思ってしまうことがいっぱい。

「…ハッピーエンドからだらだら続く
しあわせな恋人たちの日常を書いた」
(あとがきより)

ハッピーエンドの続きって、相当マヌケでかっこ悪い。
主人公たちもケンカしては仲直りしたり、
ダメになってしまったり。だけど、
「100パーセントぴったりの人」ではなくとも

「この男がいないとあたしの100パーセントは欠けるのだ」
(『100%』より)

世の中の恋人たちはそんなふうに思いつつ、
妥協したりされたりしながら
幸せになろうとしているのでしょう。
お互いの妙なクセに
なんとか折り合いをつけながら過ごしている、
すべての恋人たちが愛おしく思える短編集です。



『太陽と毒ぐも』
大好きなのに許せないことがある。
太陽の光が雲にさえぎられて届かないように―。

お風呂嫌いの彼女にいらつく男、
通販マニアの彼にうんざりしてゆく女、
どこか滑稽で不幸な、
でも実はどこにでもいる恋人たちを描いた、
ほろ苦くて愛おしい、11の恋愛物語。

参考:「BOOK」データベース

↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
素晴らしい すごい とても良い 良い

★3つ。

京極堂シリーズを読み終わり、
京極夏彦さんの別のシリーズを読み始めました。
巷説百物語シリーズ、
やはり“妖怪”がたくさん出てきます。

同じく“妖怪”が登場しても、
巷説百物語シリーズは京極夏彦さんいわく
「京極堂シリーズの裏返し」。
人の心にあるどろどろとしたものに
妖怪の名を付けて祓い落とし、事件を解決する京極堂シリーズ。
対して巷説百物語シリーズは、どうにもならない事件を
妖怪の仕業にしてしまうことで決着を着けるもの。

巷説百物語シリーズの犯人は、
心に巣食う妖怪を祓うことができなかった人々。
妖怪を祓って真相が明るみに出たとしても、
誰も幸せになれないところまでこじれてしまった事件ばかり。
だからこそ、真相は曖昧なままに
残った人々に“妖怪の仕業”と思わせて
事件の傷を癒す御行一味が必要なのかもしれない。

どちらが好みかと言うと、
今のところ京極堂シリーズのほう。
「なぜこんなことをしてしまったのか」という
犯人の心を知りたく思うので、
それにはあまり触れていず、
触れていても短編なこともあって
あまり納得できなく感じてしまう
巷説百物語は少し物足りなく思ってしまった。

それでも、事件を妖怪の仕業にしてしまう
御行一味の手際は実に見事。
キャラの特徴もシリーズを追うごとに
どんどん際立っていくような予感。
続きにやっぱり期待してしまいます。



『巷説百物語(こうせつひゃくものがたり)』
怪異譚を蒐集する山岡百介は、
雨宿りに寄った山小屋で
不思議な者たちと出会う。
御行姿の男、垢抜けた女、初老の商人、
そして、なにやら顔色の悪い僧-。
闇に葬られる事件の決着を
金で請け負う御行一味。
彼らが操るあやかしの姿は、
人間の深き業への裁きか、弔いか-。

参考:「BOOK」データベース

↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
素晴らしい すごい とても良い 良い

★3つ。

『鴨川ホルモー』の万城目学さんの初エッセイ集。
小説を書き始めた頃の話、
学生時代や子供の頃の思い出話、
旅行記、ちょっと笑える妄想、
などなど内容は色々です。

『ザ・万歩計』は抱腹絶倒、という感じではないけれど
思わずふふっと笑ってしまう話が多くて
軽く、気持ちよく読める、という感想。
個人的に好きなのは「ニュー・ソング・パラダイス」。
人類の叡智を詰め込んだ大容量メモリーに
音楽を入れるとしたら、どの歌のどの部分を入れる?
…なんておバカな妄想を真剣に考える万城目学さん、
想像すると笑ってしまうけど
自分ならどうするか、やっぱり真剣に考えてしまった。

モンゴルの遊牧民と暮らした体験記は
自然とともに生きることの大変さに言葉を失うけれど、
それすらなんだか面白おかしい。
笑えたかと思うと、祖父や飼い猫の思い出など
心がしんとするような、少し切ない話も。

万城目学さんは、日常に起こるささやかな出来事にも
意味や面白みを感じとっているよう。
そして、そんな出来事に遭遇している自分を
自分で観察しているみたい。
一歩離れた自分がそこにマヌケさを見ていたり、
切ない話でものめり込み過ぎずに淡々と書いていたり。
だからどんな話でも重すぎずさらっと読めます。

観察眼と感受性が鋭くて、
だからこそ普通の日々すら“マーベラス”。
その感覚、見習いたいものです。



『ザ・万歩計』
オニを遊ばせ鹿に喋らせる
マキメ・マナブのマーベラスな日々。
万博公園に出現した
オレンジ色の巨大怪鳥とは!?
「この世に存在するはずのない曲」への想い…
He can’t stop himself!

参考:「BOOK」データベース/本体帯

↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
素晴らしい すごい とても良い 良い