★4つ。

主人公は豊臣秀吉の正妻、ねね。
14歳で秀吉に嫁いだねねの生涯を描いています。

永井路子さんの『歴史をさわがせた女たち』のねねは
“強く優しくたくましいオカミサン”でした。
庶民的で、表には出ないが秀吉をしっかり支えた女性。
秀吉の子を産んだ淀君と対立したが、
豊臣vs徳川の争いを静観することによって
最終的に淀君に勝利した、
優しいながらも冷静でたくましい女性。

でも、『王者の妻』のねねは様々な苦しみを感じていました。
秀吉の女癖の悪さ、
夫の出世に伴い自分の置かれる環境までも
変わっていくことに感じる違和感、
権力の座に付き変わってしまった秀吉。
そして淀君に対しては複雑な感情を持ちつつも、
そのために淀君の滅亡を願っていたわけでは決してなく
世の中が平和になることを願っていた…。

『王者の妻』のねねは権力に奢ることなく
庶民的な感覚であり続け、周囲の人への気遣いも細やか。
近くにこんな人がいたら色々相談したりするのになあ、
と思える、とても好感を持てる女性です。
しかし、彼女の苦しみは庶民であったがゆえのもの。
ごくごく普通の人なのに、たまたま乱世に生まれて、
たまたま夫が天下を取ってしまった…という彼女の感覚は
現代の一庶民である自分にも理解できるものでした。

真実の姿は誰にも分からない。
でも、どんな時代に生まれても、人間は人間。
それほどかけ離れたことを
感じたり考えたりしているわけではないのだ、
と『王者の妻』を読むと思えます。

女性が表舞台に現われてこない戦国時代、
でも女性が何も思っていないし
歴史にまったく関わりがないと思ったら大間違い!
という永井路子さんの視点が好き。
男性にも読んで頂きたい小説です。



『王者の妻―秀吉の妻おねね〈上〉』
一介の草履とりから、
ついには天下人となった王者・秀吉。
そして14歳で秀吉に嫁いだ妻おねね。
平凡な夫婦に見えた2人だったが、
地位が上がるにつれ
秀吉の浮気癖と権力欲が
頭をもたげてくるのだった…。
王者の妻となりながらも
庶民的なままであったおねねの姿を通し、
戦国の女性たちが抱える
様々な問題を取り上げた長編歴史小説。

参考:「BOOK」データベース

↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
素晴らしい すごい とても良い 良い

★4つ。

6つの短編から成る『続巷説百物語』。
前作『巷説百物語』の事件とは
時間的に前後しており、続きというよりも
“ある大仕掛け”へ向かっていく事件だけが語られています。

『巷説百物語』の感想では
犯人の心情にあまり触れていないのが物足りない、
と書きました。
でも『続巷説百物語』では、語り手である山岡百介と
彼の目から見た御行又市一味の心が察せられます。
犯人の心の闇を掘り下げていく京極堂シリーズ、
事件を解決していく側の心に触れる巷説百物語シリーズ、
ちがった味わいがあるのだなと感じました。

短編1つ1つは独立しているものの
巧みな伏線により、すべてが“大仕掛け”へとつながっていく。
その見事な伏線の引き方、さすがは京極夏彦さん。
話が進むに連れ少しずつ引き込まれ、
5番目の短編「死神或いは七人みさき」では
話の中にすっかり飲み込まれてしまいました。
“死神”が本当に怖く、おぞましい。

百介は生を受けた武家にも、育った商家にもなじみ切れず、
かと言って闇の世界で生きることもできず、
昼と夜の世界の両方に憧れる、黄昏時にいる人物。
対極のものに等しく魅かれるその気持ち、
なんだか少し分かる気がします。

だから最後の短編「老人の火」では本当に悲しくなってしまった。
「昼も夜も関係ない」と強く願った百介の思い、
そしてきっと百介を大切に思っているであろう又市たちの思い、
それぞれが切ない。
同じ人間であるのに、
生きる世界がちがうとはこういうことなのか…
と、痛いほどの悲しさが残ります。

事件を収束させる又市たちの
見事な手際を楽しめた『巷説百物語』とちがい、
切なく、重く、そして魅かれる物語でした。

次は百介の老後が描かれている『後巷説百物語』。
百介は結局、念願の物語を書いたのだろうか?



『続巷説百物語(ぞくこうせつひゃくものがたり)』
諸国を巡り怪談話を蒐集する
山岡百介が出会った御行の又市一味。
闇に生きる彼らにしか終わらせることができない、
愚かで哀しい人間の悪業。
打ち首にしても生き返る悪党、
行き合う者は命を落とすという七人みさき-。
奇想と哀切のあやかし絵巻、第2弾。

参考:「BOOK」データベース

↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
素晴らしい すごい とても良い 良い

★3つ。

※いつもより少し、ネタバレ多めです。

『鴨川ホルモー』『ホルモー六景』は京都、
『鹿男あをによし』は奈良、
そして『プリンセス・トヨトミ』は大阪。
関西ってどこを取っても小説の舞台になりやすい
味のあるところだなあ、
とちょっと羨ましくなってしまう。

今回も“秘密”の正体がなかなか分からず、
気になってたまらなくなってしまいました。
半ばまでは説明が多くて時間がかかったけど、
途中からは一気読み。
大阪のイメージにうまくハマって、
心がほっこりする素敵な話でした。

…なんだけど、『鴨川ホルモー』『鹿男あをによし』に比べて
ちょっと腑に落ちない点が残ってしまった。

“秘密”があまりに大き過ぎて、
いくら何でも守り続けるのはムリでは…と感じてしまう。
反発する人、もっといっぱいいるような。

キャラはそれぞれ魅力的なのに
うまく動ききれていないような印象も。
特に調査官の1人・鳥居、
面白いキャラなのに最後まで蚊帳の外なのがちょっと残念。

1番引っかかったのは、私の勝手なイメージが原因。
私の中の「ねね」像が
『プリンセス・トヨトミ』のねねと一致しなくて。

私のねね像、「茶々」と対立し
大坂の陣でも静観していた、というもの。
そのイメージだと、ねねが茶々の血筋のために…
という行動はすんなり飲み込めなくて。
茶々とは協力していた、というのが近年の説らしいですが
1度抱いたイメージはなかなか崩れず…
そのイメージ抜きにしても、
「豊臣の血筋」と一言で言って
女性側の血筋をあまり考慮に入れていない、
男性目線の伝説だなあ、と感じてしまいました。

こう書くと不満ばかりのようですが、
全体的にはとっても面白かったのです。
「何かアホなこと」を真剣にやっている男たち、
強く優しい女たち。
舞台が大阪でなくては成立しなかった、そして
ムリがあるけど大阪ならもしかして…と思わせられる話。
大阪の方はどんな感想なのかな、
少し見たところでは悪くない印象のようだけど
ちょっと話を聞いてみたい。

万城目学さん、好きで面白かったからこその☆3つ。
『鴨川ホルモー』のような、
ヘンだけどクスクス笑えて説得力のあるお話を期待してます。
次はどこが舞台になるのだろう?
北海道ではないだろうなあ、残念ながら。



『プリンセス・トヨトミ』
このことは誰も知らない。
5月末日の木曜日、午後4時のことである。
大阪が全停止した。
長く閉ざされた扉を開ける“鍵”となったのは、
東からやって来た3人の調査官と、
生まれたときから西にいた2人の少年少女-
いや、この場合、2人の少女というべきか。
前代未聞、驚天動地のエンターテインメント、
始動。

参考:「BOOK」データベース

↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
素晴らしい すごい とても良い 良い

★5つ。

卓上織り機で手織りをする人のための本。
縮絨の詳しい方法や、房を残さない時の端の処理、
本格的な手織り機を用いた本に説明は載っているけれど
卓上織り機ではどうなるの??
と思っていた組織図についてなど、
ここが知りたかった!ということが詳しく書かれていてうれしくなります。

卓上織り機でできる技法はすべて分かるのでは、
と思うほどたくさんの技法。
まだまだ卓上織り機でできることが
たっっくさんあるのが分かってワクワクします。

載っている手織り作品、さりげなくてとっても好み。
写真もきれいで、センスの良いインテリアか
雑貨の本のようで楽しい。
その分、最初のほうの写真以外は白黒だったのがちょっと残念。
スワッチ写真もカラーのほうが分かりやすかったと思うのですが。

作品数は多くは無く、
技法の数が多いためか説明も細かくはありません。
でも織り機の使い方はとっても詳しく載っているし、
手織り初心者から経験者まで
手元に置いて長~く参考にできる、という感想。

ちょっと手織りをやってみて、
オリジナルの作品を作りたい、
でもどの技法を使えばどんな布ができるのやら…
これ以上複雑な模様や作品は
本格的な手織り機でないとできないのかな…
と思っている人にピッタリの本。

著者の福井雅己さんは糸を販売する㈱アヴリルを設立した方。
使っている手織り機も糸もアヴリルのもの。
手織り機は私が使っている
「織美絵(オリヴィエ)」でも問題なく使えます。
アヴリルの糸はホント、素敵なものがいっぱい…。
取扱店に行くと目移りしていつも困るのです。

手織りに興味が無い方にはまったく関係ないけれど、
興味がある方には超がつくほどおすすめです。



『暮らすように織りを楽しむ
―手織りの技法と素材の本
(創作のヒント! レッスン 3 手織り編)』


小さな卓上織り機でもここまで織れる!
27の技法を創作のヒントになる
作品やスワッチで紹介し、
織り方から仕上げ方までぎっしり詰め込みました。
作品は全てアヴリルの糸を使って
暮らしに役立つ実用的な作品で紹介しています。

参考:AVRIL Web