★3つ。

ビールを愛する者として
読まないわけにはいかぬこのタイトル!
4人の仲間の友情を
ビールを通して語るという描き方も新鮮です。
年齢を重ねて行くにしたがい、
次第に形を変えていく彼らの友情が実に爽やか。

4人のうちの1人、薫に関しては
あの設定は必要だったのかなあって
ちょっと違和感が残るのだけど…。
“何事もサラッと受け入れてくれる気持ちのいい友情”を
強調するためにわざわざそういう設定にしたような、
意図的なものを感じてしまった。
それでも、疎遠になったり仲たがいしても
会えば昔に戻れる、
遠く離れてもお互いに「頑張れ」って思い合える、
そんな子供の頃からの友達っていいなあ、と感じました。

その時々の彼らとビールとの関わり方が懐かしい。
初めてビールを飲んだ時の「うわ、苦っ」っていう感想、
お酒の楽しみを知り始めた頃の
量さえ飲めればエライ!という感覚、
そしてだんだん、味わうことを覚えていって…という
なんだか身に覚えのある変化が
見事に再現されています。

章と章の間にあるビールに関するコラムも楽しい。
4人のリーダー格・正吉が取り組む
地ビールづくりの問題点、
コラムがあるからよく分かって正吉を応援したくなる。

実は地ビールって
あまり美味しい印象が無かったのですよね…。
でも『ビールボーイズ』を読んで
ちょっと印象が変わってきました。
地ビール=美味しくない、と思うのは
活きがよくないマグロを食べて
「マグロはツナ缶に限る!」って言うのと同じこと、
という説明に思わず納得。
原料・製法・保存方法、すべてにこだわった地ビールを
味わってみたくなりました。

作者の竹内真さん、こういう爽やかな小説が得意のよう。
とてもスッキリした読後感です。



『ビールボーイズ』
北海道の新山市、
正吉ら12歳の仲間たちは秘密基地に集った。
ビール工場の閉鎖で、
家族と町を離れることになった少女を偲んで-
彼女を転校させてしまう“ビール”なんて、
皆で飲んでしまおう!
12歳から30歳まで、
ビールで結びついた4人の友情の軌跡。

参考:「BOOK」データベース/
出版社・著者からの内容紹介

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★3つ。

築30年のみつばコーポラスの裏階段は、
人が滅多に通らないさびれた場所。
そこで出会う“妖怪”たちは怖くはないけど、
ちょっと困った事態を引き起こす。
“妖怪”に出会った子供たちのお話が3編。

妖怪たちはちょっと困り者だけど、
お茶目でなんだかかわいらしい。
それに出会った子供たちと大人たちが対照的。
初めは驚いても、妖怪も困った事態も受け入れて
1番いい対処法を考える子供たちはたくましい。
それに比べて、大人って…。
事態をなかなか受け入れられない頭の固さと
オタオタっぷりに思わず笑ってしまうけど、
きっと自分もこんな風にかっこ悪いだろうな、
とオトナの一員としては気恥ずかしくもなってしまう。

摩訶不思議な生き物たち、
こんな妖怪なら出会ってもきっと楽しい。
けれど、全体的にはちょっぴり物足りない感じが残ります。
同じく佐藤多佳子さんの児童書
『イグアナくんのおじゃまな毎日』
大人でも楽しめてじーんと来たのですが、
それと比べるとちょっと印象が薄いのは短編だからかな。
みつばコーポラスのほかの住人、
口うるさくて「おばば」と呼ばれてしまってる有沢さんとか、
もうちょっと人柄が分かるといい味が出そうな雰囲気なのに。

もう少しだけ描いてくれたら、きっともっと面白かった。
けれど、ほんわかして心穏やかに楽しめるところは素敵です。



『ごきげんな裏階段』
築30年のみつばコーポラスの裏階段は、
さびれてボロきたないけど、とびっきりの場所。
学も一樹もナナも、そこで、
ちょっとふしぎでちょっとこまった
生き物たちと遭遇する。
謎めいた味わいの3つのお話を収録。

参考:「BOOK」データベース

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★4つ。

8つの短編はどれもタイトルの通り、幽かに(かすかに)怖い。

京極夏彦さんと言えば、
今より少し古い時代(または『ルー・ガルー』の近未来)を
舞台にしている、というイメージがあるので
時折り「ニート」なんて言葉が出てくると
ちょっと驚いてしまいます。
けれど、文章の美しさや間の取り方は京極夏彦さんらしい。
違和感なく読みましたが、
よく考えると長編とはだいぶ趣がちがいます。

京極堂シリーズなどの長編では、
奇妙なことが次々に起こっても
最終的には何が起こったのか解明され、
人間の闇の怖さが描かれている、という感想。
対して『幽談』に出てくる“奇妙なものごと”は
幽霊かもしれないし妖怪かもしれない。
何が起こっているのかよく分からない、
けれど確実に日常に何かおかしなことが忍び込んでいる、
分からないゆえのじわじわとした不気味な怖さ。

最も怖いのは、登場人物たちが“奇妙なものごと”を
いつの間にか受け入れてしまっていること。
自分の日常にも、さりげなく
“奇妙なものごと”が入り込んでいるかも…。

8つの話の中では「下の人」「知らないこと」が特に
日常に入り込んでくる“奇妙なものごと”の
うすら寒い怖さを感じました。
“奇妙なものごと”に魅かれ、
わざわざ自分から引き寄せられてしまう「成人」も怖い。

京極夏彦さんの長編でおなじみの緻密なストーリー、
圧倒的に迫ってくる人間の怖ろしさとはちがうけれど
じんわりとした幽かな恐怖が味わえます。



『幽談』
忍び寄る、幽かに怖ろしいものごと。
何か分からないけれど、
確実にそこにある奇妙なこと-。
8つの幽談を描いた、京極夏彦の別天地。
怪談専門誌『幽』の連載を単行本化。

参考:「BOOK」データベース

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