★4つ。

お金の話って、あまり人としない。
だけど、「何にいくらお金を出すか」って
その人の価値観が最も現われるところ。
『しあわせのねだん』は、
何にいくらお金を出すかを語ることで
角田光代さんの価値観がよく分かるエッセイです。

角田光代さんのエッセイ、
すごく共感できる部分とまったく分からない部分があって
その混沌さ加減がとても気になる、という感想。
『しあわせのねだん』は「お金」という
はっきりとした基準があるから、
「これは高い!」「これは安い」と
すんなり判断できて面白かった。

角田光代さんの金銭感覚がまた面白い。
服や化粧品にほとんどお金をかけず、
反面、お酒にはがっつりお金をかける…。
自虐的な話がイジイジしないで面白おかしく書かれていて、
さらさらと楽しく読めます。

“20代のとき使ったお金がその人の一部を作る”
という言葉にはちょっとドキッとさせられました。
私が20代の時…
無駄遣いばっかりしていたような気がするけれど、
きっとそれはムダではないんだよね?
と自分に確認してみたり。

角田光代さんが出会った
“貯金ばかりしていた中身がなんにもない人”
にはなりたくないな。
貯金じゃなくても、人に合わせて
納得できないことにお金を使っていると、
やっぱり“中身がなんにもない人”に
なっちゃうんじゃないか、と思う。

使ったお金が将来の自分を作るなら、
ムダじゃない無駄遣い、
自分の血となり肉となる無駄遣いをしたいな、と
『しあわせのねだん』を読んで思いました。



『しあわせのねだん』
「私たちはお金を使うとき、品物といっしょに、
何かべつのものも確実に手に入れている」

多機能の電子辞書。
輝かんばかりの女になるための化粧品。
母との忘れられない旅…。その値段は?
お金は何をしてくれて、何をしてくれないのだろう。
日々と物欲のくらしから垣間見た、幸福のかたち。

参考:「BOOK」データベース

 

★3つ。

コジマケンさんが描いた表紙が目を引く『奥様はネットワーカ』。
ミステリアスなストーリーとポップなイラストが調和して、
謎めいているけどかわいい、洒落ているけど恐い、
不思議で独特なイメージになっています。

6人の登場人物、及び犯人らしき人物によって
短いスパンで視点が入れ替わります。
その合間に詩のような文章が挟まってくるのだけれど
ちょっと難解だし、話の流れがつかえてしまうようで
あまり好みではなかったな。

けれど、話自体は面白かった、という感想。
視点がコロコロと変わるので
慣れないうちはちょっと目まぐるしいけど、
その分スピード感があり、次へ、次へと展開が気になります。

6人の人物それぞれの謎めいた行動を見ていると
一人ひとりが抱える秘密をのぞき見しているような気分に。
他人は自分の一面しか見てないし、
自分の中にある色々な面は自分自身にすら分からない。
人間が抱えている怖ろしいものを
垣間見たようでドキドキしました。

トリックにはコロッとだまされてしまった。
分かってから読み返すと、
ちょっぴり矛盾点があるような気も?
でも、読んでいる間は十分に楽しかったです。

森博嗣さんの本は初めて読んだのだけれど、
コジマケンさんのイラストのイメージが
すっかり焼きついてしまった。

詩的な文章はちょっとニガテだけれど
ストーリは面白かったので、
コジマケンさんのイラストのイメージなしで
森博嗣さんの他の本を読んでみたい気になりました。



『奥様はネットワーカ - Wife at Network』
スージィこと内野智佳は、
某国立大学工学部化学工学科の秘書。
彼女の勤める大学周辺で暴行傷害事件が多発。
智佳の周辺でも不気味な出来事が続き、
友人のルナも被害に遭ってしまうが…。
それぞれに秘密を抱えた6人の視点で
連続殺人事件を追う、
ちょっとフーガな新感覚ミステリィ。

参考:「BOOK」データベース

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★4つ。

yom yom(ヨムヨム) 2008年3月号を買った時と同じく、
小野不由美さんの十二国記シリーズ目当てで買った
yom yom(ヨムヨム) 2009年10月号。
連作はあるみたいだけど、小説もエッセイ等もすべて読み切り。
毎回買わなくてもいいし、気が向いた時に
色んな作家さんの短編をパラッと読めます。

yom yom(ヨムヨム) 2009年10月号の特集は
「誰もがすなる日記」。
日記にまつわる様々な文章が収録されています。

中でも面白かったのは、
角田光代さん・川上弘美さん・山本文緒さん、
3人の作家さんたちの日記にまつわる対談。
同じ作家さんでも日記をつけていたりいかなったり、
日記小説や人の日記を読むのが好きだったり好きじゃなかったり。
女流作家の対談、という固いイメージではなくて、
女どうし気楽におしゃべりをしている雰囲気が楽しい。

高山なおみさんの夏日記『八月の日々ごはん』も楽しかった。
食べるの大好きだから、
人が何を食べたか書いてある日記、好きなんです。

タイトルだけで笑ってしまったのは
森見登美彦さんの富士登山日記
『この文章を読んでも富士山に登りたくなりません』。
…確かに、あんまり登りたくならない。

そして、目当ての十二国記『落照の獄』。
傾きかけている柳国に現われた凶悪な犯罪者。
彼をどう裁くべきか苦悩する官吏の話です。

小野不由美さんが描く人間は、
どうしてこんなに迫力と説得力があるのだろう。
裁判員制度のことも浮かんできて、
異世界である柳国だけど他人事では全く無い。
十二国記で度々語られる「国が傾く」とはこういうことか…
とぞわぞわしながら読んだけど、
じゃあ、今、日本も傾きかけているんじゃないの?
と思ってますますぞっとしてしまった。
心の闇、人間の怖さや苦悩が静かな迫力で語られています。
柳国がなぜ傾きかけているかは謎のままだったけれど…
十二国記の続き、早く読みたいよ!

何か読みたいけど長いのはちょっとな、という時に
実によくハマってくれるyom yom(ヨムヨム)。
小野不由美さんの最新作が載っているか
チェックは欠かせないけれど、
それ以外の時でも時々買って楽しみたいな、という感想です。



yom yom((ヨムヨム)2009年10月号
手軽な文庫で読書に親しんでいる読者に向けた、
「読む」楽しみをもっと拡げるためのヨムヨム雑誌。
2009年10月号はいつもよりちょっと厚めで、
内容も充実。
趣の異なるさまざまな小説、
エッセイ等は全編読み切り。
お好きな作家、気になる頁からお読み下さい。

参考:新潮社公式HP/Amazon

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★4つ。

京都の大学から遠く離れた実験所に飛ばされ、
寂しいけれど素直にそれを言えないでいる主人公、守田一郎が
色々な人に手紙を書きまくっています。

手紙を出す相手によって守田一郎の立ち位置が
微妙に変化している様子が生き生きしていて面白い。
演じている訳ではないけれど、接する相手によって
少し自分が違っていることってよくある気がします。
ただし守田一郎の場合、
格好つけようとしていることが周囲にはバレバレ。
そこが憎めなくて、笑ってしまいます。

手紙を書くのは恋文の技術を会得するため、と言いながら
本当に気持ちを伝えたい相手にだけは
なかなか手紙を書けないのがいじらしくてちょっと可愛い。
モテなくて、情けなくて、妄想で頭がいっぱい、
それでもどこか可愛げのある男子学生の孤独な青春…
相変わらずの森見登美彦節!

『恋文の技術』は、
すべて守田一郎が書いた手紙で構成されていて
相手からの返事や説明文などはありません。
だけど、何が起こったか、
相手が守田一郎ををどう思っているか、など
なんとなく分かるのが森見登美彦さんの上手いところ。

手紙だからか、森見登美彦さんの小説でおなじみの
日常からスッと移行する奇想天外なことは
起こっていないようです。(本当は起こっているのか?)
何か起こるかなー、と思いつつ読んでいたので
ちょっぴり物足りない感はあるけれど、
いつもの情けないけど可愛げのある男の、
妙に格式ばった言い回しに笑える面白さは十分に味わえます。

ラストのスッキリ感や明るさ、全体的な雰囲気は
同じ森見登美彦さんの小説でも
『夜は短し歩けよ乙女』のほうが好き。
『恋文の技術』は森見登美彦さんの文体が好きなら楽しめる、
そうじゃなければ全く面白くない、と分かれそう。
初めて森見登美彦さんの小説を読むなら
ちがう本がいいのでは、と思いますが
好きな人なら『恋文の技術』もくすくす笑えて楽しめます。



『恋文の技術』
京都の大学から、遠く離れた実験所に飛ばされた
男子大学院生が一人。
無聊を慰めるべく、文通武者修行と称して
京都に住むかつての仲間たちに手紙を書きまくる。
手紙のうえで、友人の恋の相談に乗り、
妹に説教を垂れ―。

参考:「BOOK」データベース

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