★2つ。

知人が浅田次郎さんにハマっていて薦められました。
最初に読むなら…と、
映画にもなった『鉄道員(ぽっぽや)』を読了。
読んでみるまで短編だと知らなかったのだけれど。

そんでもって感想なのですが…
うーん、この短編集は好みではないです。
ぐっと来るところもあるんだけれど、
死者や霊が出てくる話が多く
泣かせようとする意図を感じてちょっと引いてしまった。

『鉄道員(ぽっぽや)』は優しい話でまだ素直に読めたけど、
北海道弁が気になって仕方なかった!
こういう訛りで話す人もいると思うけど、
文章になってしまうとかなり大げさで
道民だからこそ引っかかる…。
「オリヲン座からの招待状」の京都弁も、
京都の人が読むとちがうのかなあ、なんて思ったりして。
ほかの短編も、素敵な奇跡が起こるけれど
あまり好感を持てない主人公だったりして、
最後まで素直に入り込めないままでした。

残念ながらこの短編集は相性があまり良くなかった。
それでもぐっと来るところもあったし、
1冊だけで合わないと決めつけることはあまりしたくない。
浅田次郎さん、色々な作風があるようなので
もう1度、まったくちがう作品を読んでみたいと思っています。



『鉄道員(ぽっぽや)』
娘を亡くした日も、妻を亡くした日も、
男は駅に立ち続けた-。
心を揺さぶる“やさしい奇蹟”の物語。
「鉄道員(ぽっぽや)」はじめ、
「ラブ・レター」「角筈にて」など8編収録。
第117回直木賞受賞作。

参考:出版社・著者からの内容紹介

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★4つ。

知らない土地をTVや本で目にすると、
“行ってみたい”と思うよりも“住んでみたい”と思うことが多いです。
観光地過ぎず、何も無さ過ぎず、のんびりしてるけど
何をするにもどこへ行くにも特に不自由は感じないところ。
そんな土地にゆっくり滞在して、
じっくりと時間をかけて色んなものをしっかり見たい。
そうすると時間も予算もたっぷり欲しいし、
地元情報を知りたいから、友人が住んでいるところがいい…
なんて贅沢を言っていると、旅行なんてそうそう行けません。

『チェンマイ アパート日記。』
うらやましくてうらやましくて。
k.m.p.のお2人、なかがわみどりさんとムラマツエリコさんが
チェンマイのアパートで暮らす1ヶ月。
住まいを自分好みに整えて、
地元の人が行くスーパーや市場で買い物して、
美味しいお店や面白い場所を地元の友人に教えてもらって、
お気に入りのお店に何度も行って…
私が、1度はしてみたい!
と夢見ている旅そのものじゃないか。

フリーでデザインや執筆をするk.m.p.のお仕事
大変なこともいーーーっぱいあるけれど、
頑張ればこんな旅行に行ける、っていうのはなんとも魅力的。
2人で居心地良くしつらえたこじんまりしたアパートの様子や
ゆっくりとした生活っぷりもとても惹かれます。

チェンマイという街も魅力的。
k.m.p.は好きなのに旅行記は読んでなかったのは、
“行きたい” より “住みたい” 度合いが強い私は
海外旅行にそれほど興味が無いから
(日本語圏でしか暮らす自信が…)。
それでも『チェンマイ アパート日記。』の
たっぷりと載っている写真やかわいい絵、
いいところも悪いところも書いている2人の感想を見ていたら
チェンマイって良さそうなところだな…と思いました。

小さな熱気球を空に飛ばす幻想的なお祭りの光景、
タイの人々のほほえみ、
コップンカー=ありがとう、という優しくかわいい言葉の響き、
キッチュなものから洗練されたものまで揃っている雑貨屋…。

「正反対のものが、さりげなく、
でもしっかりと「共存」している、そんな印象。」というチェンマイ、
そんな場所に住んだら毎日が楽しそう。

良くも悪くも印象が素直に綴られ、
チェンマイへの愛情がたっぷり詰まってる。
k.m.p.のほかの旅行記も読んでみたくなる、暖かい旅行記です。



『チェンマイ アパート日記。』
ロングステイする前に、“ちょっとステイ”。
タイ北部チェンマイで、
「アパート暮らし」をしてみました。
チェンマイへの愛情と
滞在型旅行の素敵さが
たっぷり詰まった旅行記です。

参考:「BOOK」データベース

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★4つ。

『日々ごはん〈1〉』に続き、料理家の高山なおみさんの本。
高山なおみさんが、好きな人に
ご飯を作ってあげながら話をしています。
ミュージシャンのハナレグミが登場してちょっとびっくり。

『たべる しゃべる』
写真は写真、文章は文章、とまとまっていて
ちょっと見づらく感じたけれど、
長野陽一さんの写真を大切にしたこのスタイルがよいのかも。
本の中に写真集があるようだな、という感想。

美味しそうな料理がたくさんあるのに、
実際に食べているシーンがあまり語られていないのが残念…
と最初は思いました。
だけど読み進めるうちに、この本の主役は料理ではない、
ということに思い当たりました。
主役は料理でも高山なおみさんでもなく、
高山なおみさんがご飯を作ってあげた人々。
対談集ではなく、高山なおみさんの視点で語られていることで
その人たちの魅力や個性が浮き彫りになり、深い印象が残ります。

その中で1人をあげるなら、『日々ごはん』に度々登場する
高山なおみさんのダンナ様、スイセイさん。
写真で、変わった髪形の人がいるなあ、と思っていたら
スイセイさんだったのがびっくりで思わず笑ってしまいました。
発明家だったんだ!広島訛りだったんだ!という事実も新鮮。
「みい(=高山なおみさん)なんかより
もっと料理が上手な人は、ごろごろおるじゃろう?」
奥さんが人気料理家であるということを
実にさらっと受け止めているスイセイさん。
ご夫婦ともに力が抜けた自然体な人なんだなあ。

お料理上手で家族にも喜ばれて…というのが、
私が今までイメージしていた華やかな料理研究家の姿。
だけど高山なおみさんは、ダンナ様に
「家族としては、奥さんが料理家っていうのは、けっこう迷惑じゃ」
と言われている、とさらっと言ってしまうし、
料理を作りに行っても、その人の作ったご飯を食べたくなって
作ってもらっちゃう(もちろん、高山なおみさんも作ってたけど)。
肩に力を入れない暮らしと魅力的な人々、
そこにそっと寄り添っている季節感を大切にした料理。
生活に欠かせない「食べる」ということを
飾り過ぎず、当たり前に大事にしている感覚がありました。
“料理研究家”というよりは“美味しいものを愛する人”。
レシピそのものも美味しそうだけど、
高山なおみさん自身に惹かれます。

担当編集者さんいわく、 『たべるしゃべる』は
「食べるときのシチュエーションまで含めたレシピ本。」
魅力的な人々と料理がある風景が
じっくりと素直な言葉で描かれている。
そんな風景の一部になりたくなって、
高山なおみさんが「料理を作ってあげたい」と
思う人になりたいな、と思いました。



『たべる しゃべる』
素材の持ち味を引き出すレシピと
食欲をそそる文章で人気の料理家、
高山なおみさんが身近な人々のもとに
ごはんを作りに行きました。
相手の家や仕事場にて台所を借り、
食べたそうなものをみつくろう。
料理をほおばりながら、
唇からこぼれた様々な物語。
美味しい料理と人々の魅力が詰まっています。

参考:「MARC」データベース/Amazon内容紹介

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★3つ。

『あしながおじさん』の著者、ジーン・ウェブスターの処女作。
『おちゃめなパッティ』で高校生だったパッティの
大学時代が描かれています。

高校時代と比べると
眩しいほどの若さはやっぱり少し薄らいで、
大人に、女っぽくなっているパッティ。
その分、年齢のわりに幼いところが目に付きました。
『おちゃめなパッティ 大学へ行く』が発表された1903年、
今では考えられないほどの
窮屈さを強いられていたアメリカの女性。
その中で、いたずら好きで自由奔放なパッティは
生き生きとして魅力的…
なんだけど、ちょっぴり考えが浅いかな?と。
頭の回転は速いけれど
ちょっと軽薄なお嬢さん、というイメージ。

大好きな『あしながおじさん』のジュディと比べてしまう。
明るく前向きに暮らしながらも
しっかりと地に足を付けて考えているジュディ、
作中でも「才気はあるが深味がない」と評されてしまうパッティ。

『おちゃめなパッティ 大学へ行く』そのものを楽しむというよりも、
パッティにジュディの原型を見る楽しみ方を終始していました。
それでも、パッティ自身もかわいいな、と思えるのは
正義感があって優しく、根が素直だからなのでしょう。

「あたしは、年をとりだしたのよ。
そろそろ、善良になるときだわ。…」
お説教されて素直にそう思えるパッティ、
これから大人になるにつれ
どんどん魅力的な女性になっていきそう。
パッティのその後が描かれることはなかったけれど、
ジュディとはまたちがうその姿も
見てみたかったな、という感想です。



『おちゃめなパッティ 大学へ行く』
清く、正しく、いたずら大好きの
パッティが大学生になった!
ちょっぴり成長したパッティが大騒動をまき起こす。
少女から大人になる時期の
かけがえのない束の間のひととき。
『あしながおじさん』の
ジーン・ウェブスターの処女作。

参考:「BOOK」データベース

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★4つ。

東京近郊の、小さな冴えない町。
角田光代さんの『トリップ』は、
そこに暮らす人々が主人公の連作短編集です。

同じ町に暮らしているとは言っても
それぞれ深いつながりがあるわけではなく、
すれ違ったり見かけたりする程度。
周囲から見ればごく平凡で幸せに見える人たちだけど、
みんながみんな、生活に行き詰まりを感じている…。

角田光代さん、いつもながら
怖ろしくリアルな物語を描くなあ、という感想。
ここではないどこかに行きたい、
今とはちがう人生を送りたい、
でも結局どこに行っても待っているのは“日常”。
登場人物と同じ問題を抱えているわけではないけれど、
小さい町に閉じ込められてしまっているような閉塞感は
落ち込んだ時に感じる気持ちにひどく似ている。
そんな行き詰まり感が全体に漂っていて、
少々辛くなるキケンあり。

だけど、読み終わった時には
少し肩の力が抜けて、楽になる感覚がありました。
重苦しい日常を過ごし続ける登場人物たち。
それでもその日常はほかならぬ自分が選んだものであり、
うんざりすることはあってもそれほど悪いものでも無い。
希望というと大げさで、諦めというと後ろ向き、
2つが入り混じった妙に明るくてサバサバした気分は
自分も味わったことがある気がします。

最後の話「サイガイホテル」の主人公が
かつて自分が住んでいた家で暮らす人を想像して思ったこと、

「どんな人が住んでもきっと同じことだろう。
そこから逃げ出したいと思い、
けれど次の日にはそんなことを思った自分を恥じ、
近くの人間や周囲のものごとをいとしいと実感し、
それでもその数時間後には、
何かに舌打ちをしチクショウメと口のなかでつぶやいている。」

そんなふうにゆらゆらとしながら、
それでいいだろう、と感じられる。
平凡でどこにも行けなくて、それでも前を見て歩いていける、
そんな“日常”が実にリアルに感じられました。




『トリップ』
駆け落ちしそびれた高校生、
クスリにはまる日常を送る主婦、
パッとしない肉屋に嫁いだ主婦―。
何となくそこに暮らし続ける
何者でもない人々。
小さな不幸と小さな幸福を抱きしめて生きる人々を
透明感のある文体で描く連作小説。

参考:「BOOK」データベース

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★4つ。

骨董やアンティークではなく、
どこにでもあるような古道具を扱っている中野商店。
『古道具 中野商店』は、どこかにあるような無いような、
不思議に懐かしい気がする古道具屋さんで起こる物語。

最初の一文からするっと『古道具 中野商店』の世界に
入って行った、という感想。
虚構の小説世界というよりも、
現実の延長に中野商店があるかのような感覚。
主人公のヒトミは、恋をしているようなしていないような、
中野商店でのバイト生活にも満足しているようないないような、
はっきりしない、今どきじゃない人。
でも、そのゆらゆら感に共感してしまう。
じれったい恋と世代を超えた友情も、
自分が体験したことがあるかのような感覚に陥りました。

ヒトミや、恋?の相手のタケオをはじめ
登場人物は中野商店にある古道具と同じように、
流行じゃないし主張もしてこないけれど
しっかりと存在感ある人々。
いかにもどこかにいそうな人たち…
と思ったけれど、よくよく考えてみると
みんな一癖あって周りにゴロゴロいるタイプじゃないんです。
どこかにいそう、と思えるのは川上弘美さんの
静かに雄弁な文章によるのかも。
一人ひとりのディテールや、
店の奥に商品の炬燵を置いてお茶を飲む中野商店の
少し怠惰で居心地のいい空気感。
実際にその人に会ったり、
そこでお茶を飲んだことがあるかのような気になってきます。
細かい描写もキラキラとした装飾もないけれど
たくさんのものごとが伝わってくる、
じんわりと噛み締めて、味わって読みたくなる文章。

色々なことが変わってしまったラストは、
一瞬ちょっぴり淋しさを感じました。
でも、ヒトミもタケオもずいぶん変わったようでいて、
それでもヒトミはヒトミでタケオはタケオだ、
と自然にうなずける。
時間が経つって優しいことだ。
傷を癒し、新しい自分と前からいる自分が自然にとけあう。
変わっていくことは自然で嬉しいことだと
素直に受け止められる終わり方でした。

川上弘美さんの本はエッセイ
『東京日記 卵一個ぶんのお祝い。』を先に読んでいました。
小説は初めて読んだけれど、
じわじわと沁み込んでくるような文章と世界観は共通。
不思議な存在感ある文章、また味わいたくなりました。



『古道具 中野商店』
東京近郊の小さな古道具屋で
アルバイトをする「わたし」。
ダメ男感漂う店主・中野さん。
きりっと女っぷりのいい姉マサヨさん。
わたしと恋仲であるようなないような、
むっつり屋のタケオ。
どこかあやしい常連たち…。
不器用でスケール小さく、けれど懐の深い人々と、
なつかしくもチープな品々。
なんともじれったい恋と世代をこえた友情。
なつかしさと幸福感にみちた長篇小説。

参考:「BOOK」データベース/「MARC」データベース

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