★4つ。

いしいしんじさんの文と、植田真さんの絵。
“絵本”というイメージではないけれど、
『絵描きの植田さん』
文章と絵の両方で織り成されている物語です。

不幸な事故に合ってしまった絵描きの植田さん。
自分の世界をそっと築き上げ
静かに暮らす植田さんの姿からは一見、
その苦しみや哀しみは感じられません。
でもそれは、植田さん自身も
自分がどれだけ傷つきどれだけ心を閉ざしているのか
気づいていなかったからかもしれない、という感想。
植田さんが自分の心を知った時、
その傷が深い深いものであることに
読んでいるほうも気づいて胸が痛くなりました。

けれど同時に、
植田さんの周りの人々の優しさにも気づくことができました。
自然に植田さんと心を通わせる少女、メリや
無骨だけど人を思いやる心に溢れたオシダさん。
すべての人たちが暖かい。
単なる“いい人”じゃない、悪い部分もいっぱい持ってる。
でも、打算が一切入らない、
ただただ相手のことを思う真の優しさを持った人々。

登場人物の植田さんと、実際に絵を描いた植田真さんは
別の人物であるようですが、
その絵は“絵描きの植田さん”が描いた絵として現われます。
深い雪と凍った湖に閉ざされた村の真冬の白さと、
だからこそ分かる世界の美しさが絵から、
本の装丁全体から伝わってきて、
「私たち、こんなすばらしい世界に住んでるのよ!」
というメリの言葉が心に沁みる。

いつも優しい奇跡が起こるいしいしんじさんの物語と
植田真さんの絵がぴたりと寄り添い、
じわっと心を暖めてくれました。



『絵描きの植田さん』
ツノジカ、白テン、ナキウサギ、
マヒワ、ツグミ、キレンジャク…
高原の小さな村に絵描きの植田さんは住んでいる。
かつて悲しい事故にあった植田さんの心は、
いつもしんと静かだ。
ある日、凍りついた湖を渡って、母と娘が越してくる。
娘メリのすなおさは
植田さんの心を溶かしてゆくが…。
植田真の絵が扉をひらく奇跡のような物語。

参考:「BOOK」データベース

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