★4つ。

『チョコレート工場の秘密』感想。で有名な
ロアルド・ダールの『Matilda』、英語で読んでみました。
同じロアルド・ダールでも大人向けの作品は
ちょっと難しい英語だけど、
『Matilda 』のような児童書は比較的簡単だし
何と言っても面白いから最後まで読み切れます。

小学校入学前から数学の難しい問題をすらすらと解き明かし、
新聞も小説もぐいぐい読めてしまう天才少女、マチルダ。
マチルダが理解のない大人たちを面白おかしくやっつける、
痛快で楽しい物語…
なんだけど、それだけとはとても思えなかった。
皮肉たっぷり、色々なことを考えされられる、という感想。

子供に関心の無い両親、凶暴な女性校長。
描写も挿絵もユーモラスだけど、
マチルダの周囲にいる大人たちの子供たちに対する愛情の無さ、
傲慢な態度は冷静に考えると目を覆いたくなるようなもの。
マチルダの賢い仕返しには思わず拍手喝采してしまうけれど、
それってたまたまマチルダが
一般的な子供たちとは違う能力を持っていたから出来たのだ、
ということが心にずっと引っ掛かる。
『Matilda』ではとりあえず
マチルダにとってのハッピーエンドは提示されている。
だけど、人間が自分より弱い立場の人間を虐げる、という
現実にしばしば起こっている問題に対しての
根本的な解決が示されているわけじゃない。

複雑な思いがありつつも、
最後は「マチルダ、良かったね」と思えるのは
彼女がまっすぐな心の持ち主だからだと思う。
マチルダは本当に賢い、と思うのは
数学ができるからでも、効果的な仕返しを考えつくからでもなく、
様々な小説と数少ない優しい大人から
人間として大切なものを学び、吸収していたから。
1番身近で影響力のある両親に対しても、
間違っていることは間違っていると
自分の頭と心でしっかり判断していたマチルダ。

自分は、マチルダの周囲の
ろくでもない大人たちになってしまってはいないだろうか。
そして自分はマチルダのように、圧倒的な権力を持つ何かに対し、
冷静な判断を下し、賢く対処して、幸せを掴むことができるんだろうか。
面白おかしく読めるけど、子供の立場で、大人の立場で、
様々なことを考えさせられてしまう物語でした。



『Matilda 』
マチルダは世にも不思議な天才少女。
3歳になる前に字が読めるようになり、
4歳で有名な文学作品も読みこなす。
彼女を邪魔者扱いする両親、
凶暴な女校長…
高圧的な大人たちに頭脳で立ち向かうマチルダの、
痛快で面白い、けれど
ろくでもない大人たちへの皮肉が
たっぷりこもった物語。

参考:「BOOK」データベース・Amazon商品紹介

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★4つ。

穂村弘さんの『世界音痴』を読み終わった最初の感想。
なんって、ダメな人なのかしら、この人ってば。

総務課長代理の肩書きを持ってはいるものの、
家ではベッドに寝そべって菓子パンをむさぼる。
社員旅行で同室の人と話すことができなかったり、等々、
引いてしまうくらいのダメっぷりがあまりにも赤裸々。

「世界音痴」と自分を定義し、世界とうまく関われないと言いつつも
それでも少しは関わりたい…と時々そっと手を伸ばしてみては
やっぱり駄目だ、と手を引っ込める、
そんな孤独な姿が痛々しいけど笑えてしまう。
しかしそのダメさが、程度はあれど自分の中にもある、
と感じてしまうと「しょうがないなあ」と見守りたい気分になってゆく。

しかしそのダメっぷり、
果たしてどこまで本当か?という疑いがつきまとう。
エッセイのほかに、妄想を突っ走らせた摩訶不思議な文章があり、
両方読んでいると、エッセイのほうもフィクションじゃないのか…
という気がしてくるのです。
「ダメだなあ、この人」なんて笑っている読者は
穂村弘さんの思惑通りに騙されているだけなんじゃないのか…
と思いつつ、嘘か本当かよく分からないそのカオスを
いつの間にやら楽しんでしまっている。

楽しんでいると、時にどきんとする言葉に出会う。

 大トロのパック(半額)を手にとって、
 買おうか買うまいか、迷っているとき、不意に「ああっ」と叫びたくなる。
 「人生って、これで全部なのか」

何気ない日常の中に不意に見え隠れする絶望は、
目の前に突きつけられると少々ずきんとくる類のもの。

痛々しいほどのダメっぷりと妄想の摩訶不思議さ、
そして時折り放たれる心の奥底をえぐるような言葉に、
穂村弘さんがどうにも引っかかってしまう存在となってくる。

ところどころに挟まれる短歌がまた印象深い。
少しずれた光景を歌っているように見えても
実は穂村弘さんが見つめている光景がぎゅっと凝縮されている。
つい長々と言葉を連ねてしまいがちな私は、
短歌という定型の中で感情や情景が現されることに憧れを感じます。

穂村弘さんは今ではご結婚されているそうです。
どこまで嘘で本当なのか、本当に“ダメ男”なのか、
なんだかまだよく分からなくて、
それゆえにほかの著作も色々読んでみたくなりました。



『世界音痴』
末期的日本国に生きる歌人、穂村弘
(39歳・独身・総務課長代理)。
母親が置いた菓子パンをベッドでむさぼり食い、
青汁ビタミン服用しつつ、ネットで昔の恋人捜す。
「世界」に憧れつつも「世界」に入っていけない
「青春ゾンビ」の日常と心情を赤裸々に綴る、
爆笑そして落涙の告白的エッセイ。

参考:「BOOK」データベース/
出版社・著者からの内容紹介

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