★3つ。

角田光代さんの小説に出てくる人々はみな、
どこか社会からふわふわと漂っている、という印象。
だけどなぜか、読み終わった後の感想はずいぶんちがう。
『薄闇シルエット』は“圧倒的リアル”が
心に痛いほどだったんだけど、
『みどりの月』は登場人物たちの行動が
あまりに突拍子も無いように思えるのです。

「みどりの月」、南の周りの3人は悪人というわけじゃない。
でも、やる気の無さが身勝手さとなり
読んでいて南と同様、イライラというか、モヤモヤというか…。
そしてもっとモヤモヤするのが、イライラしながらも完全に拒否せず
いつの間にか状況を受け入れていく南。
はっきり決別するのかと思いきや、
常識の枠組みからかなり外れた行動を選んでしまう南の
心の動きがよく理解できずに戸惑ってしまいました。

けれど、そのモヤモヤ感にこそなぜか惹き付けられてしまう。
思うままにならずにイラつくのは、
“こうあるべき”という理想の姿があるから。
すべて許して理想の姿なんて捨ててしまったら、
理想からも自由になってどんな行動でも選べる。

すべてを受け入れることと、
すべてから解放されることが南に同時に起こっているみたい。
状況はちがうけど、「かかとのしたの空」の主人公にも
それは起こっているように思えます。
そんなふうにすべてから解放されたい、でもそれは駄目…
そんな気持ちが読んでいる自分にあって、
だからこそモヤモヤして、気にかかるのかも。

『みどりの月』、単行本が出たのは1998年。
今まで読んだ角田光代さんの小説、
書かれた年代によって読後感がずいぶんちがいます。
リアルで共感できるのは
『薄闇シルエット』のようにここ数年の小説だけど、
妙に心に引っかかる『みどりの月』のような話も
また読みたくなってしまいそうです。



『みどりの月』
恋人のキタザワのマンションで
同居することになった南。
ところが、そこにはキタザワの
遠い親戚マリコとその恋人サトシが住んでいた…。
成り行きまかせで始まった
奇妙な共同生活「みどりの月」、
若い夫婦があてのないアジア放浪に出る
「かかとのしたの空」。
明るい孤独とやるせない心をうつしだす作品集。

参考:「BOOK」データベース

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