幽談京極夏彦

★4つ。

8つの短編はどれもタイトルの通り、幽かに(かすかに)怖い。

京極夏彦さんと言えば、
今より少し古い時代(または『ルー・ガルー』の近未来)を
舞台にしている、というイメージがあるので
時折り「ニート」なんて言葉が出てくると
ちょっと驚いてしまいます。
けれど、文章の美しさや間の取り方は京極夏彦さんらしい。
違和感なく読みましたが、
よく考えると長編とはだいぶ趣がちがいます。

京極堂シリーズなどの長編では、
奇妙なことが次々に起こっても
最終的には何が起こったのか解明され、
人間の闇の怖さが描かれている、という感想。

対して『幽談』に出てくる“奇妙なものごと”は
幽霊かもしれないし妖怪かもしれない。
何が起こっているのかよく分からない、
けれど確実に日常に何かおかしなことが忍び込んでいる、
分からないゆえのじわじわとした不気味な怖さ。

最も怖いのは、登場人物たちが“奇妙なものごと”を
いつの間にか受け入れてしまっていること。
自分の日常にも、さりげなく
“奇妙なものごと”が入り込んでいるかも…。

8つの話の中では「下の人」「知らないこと」が特に
日常に入り込んでくる“奇妙なものごと”の
うすら寒い怖さを感じました。
“奇妙なものごと”に魅かれ、
わざわざ自分から引き寄せられてしまう「成人」も怖い。

京極夏彦さんの長編でおなじみの緻密なストーリー、
圧倒的に迫ってくる人間の怖ろしさとはちがうけれど
じんわりとした幽かな恐怖が味わえます。



『幽談』
忍び寄る、幽かに怖ろしいものごと。
何か分からないけれど、
確実にそこにある奇妙なこと-。
8つの幽談を描いた、京極夏彦の別天地。
怪談専門誌『幽』の連載を単行本化。

参考:「BOOK」データベース

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