★4つ。

京都の大学から遠く離れた実験所に飛ばされ、
寂しいけれど素直にそれを言えないでいる主人公、守田一郎が
色々な人に手紙を書きまくっています。

手紙を出す相手によって守田一郎の立ち位置が
微妙に変化している様子が生き生きしていて面白い。
演じている訳ではないけれど、接する相手によって
少し自分が違っていることってよくある気がします。
ただし守田一郎の場合、
格好つけようとしていることが周囲にはバレバレ。
そこが憎めなくて、笑ってしまいます。

手紙を書くのは恋文の技術を会得するため、と言いながら
本当に気持ちを伝えたい相手にだけは
なかなか手紙を書けないのがいじらしくてちょっと可愛い。
モテなくて、情けなくて、妄想で頭がいっぱい、
それでもどこか可愛げのある男子学生の孤独な青春…
相変わらずの森見登美彦節!

『恋文の技術』は、
すべて守田一郎が書いた手紙で構成されていて
相手からの返事や説明文などはありません。
だけど、何が起こったか、
相手が守田一郎ををどう思っているか、など
なんとなく分かるのが森見登美彦さんの上手いところ。

手紙だからか、森見登美彦さんの小説でおなじみの
日常からスッと移行する奇想天外なことは
起こっていないようです。(本当は起こっているのか?)
何か起こるかなー、と思いつつ読んでいたので
ちょっぴり物足りない感はあるけれど、
いつもの情けないけど可愛げのある男の、
妙に格式ばった言い回しに笑える面白さは十分に味わえます。

ラストのスッキリ感や明るさ、全体的な雰囲気は
同じ森見登美彦さんの小説でも
『夜は短し歩けよ乙女』のほうが好き。
『恋文の技術』は森見登美彦さんの文体が好きなら楽しめる、
そうじゃなければ全く面白くない、と分かれそう。
初めて森見登美彦さんの小説を読むなら
ちがう本がいいのでは、と思いますが
好きな人なら『恋文の技術』もくすくす笑えて楽しめます。



『恋文の技術』
京都の大学から、遠く離れた実験所に飛ばされた
男子大学院生が一人。
無聊を慰めるべく、文通武者修行と称して
京都に住むかつての仲間たちに手紙を書きまくる。
手紙のうえで、友人の恋の相談に乗り、
妹に説教を垂れ―。

参考:「BOOK」データベース

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