★4つ。

骨董やアンティークではなく、
どこにでもあるような古道具を扱っている中野商店。
『古道具 中野商店』は、どこかにあるような無いような、
不思議に懐かしい気がする古道具屋さんで起こる物語。

最初の一文からするっと『古道具 中野商店』の世界に
入って行った、という感想。
虚構の小説世界というよりも、
現実の延長に中野商店があるかのような感覚。
主人公のヒトミは、恋をしているようなしていないような、
中野商店でのバイト生活にも満足しているようないないような、
はっきりしない、今どきじゃない人。
でも、そのゆらゆら感に共感してしまう。
じれったい恋と世代を超えた友情も、
自分が体験したことがあるかのような感覚に陥りました。

ヒトミや、恋?の相手のタケオをはじめ
登場人物は中野商店にある古道具と同じように、
流行じゃないし主張もしてこないけれど
しっかりと存在感ある人々。
いかにもどこかにいそうな人たち…
と思ったけれど、よくよく考えてみると
みんな一癖あって周りにゴロゴロいるタイプじゃないんです。
どこかにいそう、と思えるのは川上弘美さんの
静かに雄弁な文章によるのかも。
一人ひとりのディテールや、
店の奥に商品の炬燵を置いてお茶を飲む中野商店の
少し怠惰で居心地のいい空気感。
実際にその人に会ったり、
そこでお茶を飲んだことがあるかのような気になってきます。
細かい描写もキラキラとした装飾もないけれど
たくさんのものごとが伝わってくる、
じんわりと噛み締めて、味わって読みたくなる文章。

色々なことが変わってしまったラストは、
一瞬ちょっぴり淋しさを感じました。
でも、ヒトミもタケオもずいぶん変わったようでいて、
それでもヒトミはヒトミでタケオはタケオだ、
と自然にうなずける。
時間が経つって優しいことだ。
傷を癒し、新しい自分と前からいる自分が自然にとけあう。
変わっていくことは自然で嬉しいことだと
素直に受け止められる終わり方でした。

川上弘美さんの本はエッセイ
『東京日記 卵一個ぶんのお祝い。』を先に読んでいました。
小説は初めて読んだけれど、
じわじわと沁み込んでくるような文章と世界観は共通。
不思議な存在感ある文章、また味わいたくなりました。



『古道具 中野商店』
東京近郊の小さな古道具屋で
アルバイトをする「わたし」。
ダメ男感漂う店主・中野さん。
きりっと女っぷりのいい姉マサヨさん。
わたしと恋仲であるようなないような、
むっつり屋のタケオ。
どこかあやしい常連たち…。
不器用でスケール小さく、けれど懐の深い人々と、
なつかしくもチープな品々。
なんともじれったい恋と世代をこえた友情。
なつかしさと幸福感にみちた長篇小説。

参考:「BOOK」データベース/「MARC」データベース

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