★5つ。

高山なおみさんの『たべるしゃべる』に登場していた、いしいしんじさん。

「…人は、心が動いた時、体の中に実感の固まりができる。
…『ぶらんこ乗り』でいしいさんは、
その固まりにあまりにぴったりな言葉を当てがった。
…子供のころから、私の探していた“ほんとう”が、
本から溢れ出て、寒天みたいに部屋の中を覆っていた。」

『ぶらんこ乗り』を紹介する高山なおみさんのこの感想を読んで
ぜひとも読まないと!という気持ちに。
『ぶらんこ乗り』を紹介するのに、
これこそ“ほんとう”の言葉のように思います。

今はもういない、弟のノートを読む“私”。
幼いけれど特別な存在だった弟の淋しさ、
必死でこの世に伸ばしていた手、凛とした孤独な決意。
ひらがなばかりのノートに、それらのものが溢れている。
「さみしい」「かなしい」なんて直接的な言葉はほとんどなくても。

いつの間にか、姉と同化して弟のノートを読んでいました。
弟の孤独に気づけなかった心の痛み、
その痛みを受け止める姉もまた孤独で。
だけど、弟がノートに書いた物語に登場した
ぶらんこ乗りの夫婦のように、孤独でも、一瞬でも、
また手をつなげると静かに待つ姉。
読んでいる私も姉の気持ちで、静かに弟を待っていました。

現実の世界と向こう側の世界、
どちらの物語でもなく、どちらの物語でもある。
ぶらんこに乗って2つの世界を行き来する弟。
そのノートを通して覗き込んだ向こう側の世界は
静かで、少し怖くて、少し魅力的。
読み終わった後も、向こう側の世界の風景が
自分の中にしっかりと静かに存在している気がしています。

自分自身の芯に近い部分に刺さってくる感覚がありました。
何度も読み返してしまう本になりそうです。



『ぶらんこ乗り』
ぶらんこが上手で、指を鳴らすのが得意な男の子。
声を失い、でも動物と話ができる、つくり話の天才。
もういない、わたしの弟。
―天使みたいだった少年が、
この世につかまろうと必死でのばしていた小さな手。
残された古いノートには、
痛いほどの真実が記されていた。
物語作家いしいしんじの誕生を告げる
奇跡的に愛おしい第一長篇。

参考:「BOOK」データベース

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コメント
ぶらんこ乗り

本の感想・レビュー記事へのコメント
読者のわたしも、少年のおねえちゃんとおんなじようにお話がでてくるのをわくわくして待ちながらページをめくりました。「おばけのなみだ」がすきでした。
物語の最後、少年のついたやさしいうそがすごくすてきでしたね。
2010/05/03(Mon) 18:11 | URL  | 日月 #ffVU29mw[ 編集]
>日月さん
弟のお話には引き込まれてしまいました。
少し怖いような、でも魅力的なお話でしたね。
弟がついた嘘は思いがけないものでした。
おねえちゃんの気持ちで、
そのすてきな嘘に「ありがとう」といいたい気持ちになりました。
2010/05/03(Mon) 21:20 | URL  | Run #-[ 編集]
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