★4つ。

映画の原作として書き下ろされた、群ようこさんの『かもめ食堂』
フィンランドの首都、ヘルシンキにある「かもめ食堂」が舞台です。

群ようこさんのエッセイや小説は
“怒り”が根底にある、という感想だったけれど、
『かもめ食堂』はゆるゆるとした雰囲気。
怒りはあれどユーモアが強く、くすくす笑いながらさらりと読めます。
書かれた時に配役はすでに分かっていたのでしょうか、
サチエ=小林聡美、ミドリ=片桐はいり、
マサコ=もたいまさこのイメージがあまりにもぴったり。
3人の顔が浮かんできて、ちょっとした描写でも笑えてしまいます。

かもめ食堂があるフィンランドって、いい感じの印象があります。
人々は素朴で飾らず、愛想はないけど優しくて、自然が豊か。
でもそれって、フィンランドのどこかにあるというムーミン谷とか
TVでチラっと見たとか、そんなぼんやりしたイメージなんですよね。
『かもめ食堂』に登場する3人の女性も、
フィンランドに対する思いや知識は
私とそれほど変わりないように見えます。
そんな人たちがヘルシンキで暮らすなんてちょっとびっくりだけど、
人生ってそんなこともあるかもなあ、と納得してしまう。 
いかにも小説らしく都合いい箇所もあるけれど、
それもまあいいか、と思える緩い雰囲気。

3人の女性たちはとってもリアルな日本女性。
人生に対する怒りがありつつも
それを突き抜けてしまっているのが、
こののんびりした空気の源ではないかと思う。
1番若いサチエで38歳。
日本での人生に行き詰まりや迷いを感じているけど、
“それはそれ”として毎日を淡々と丁寧に過ごす今の3人。
日本人から見たらのんびりとしているように見えても
同じように悩みや苦しみを抱えていて、
でもやっぱり “それはそれ”として
毎日をゆったり暮らすフィンランドの人たち。
そんな人々の醸し出す空気とフィンランドのイメージが、
さらりと気持ちの良い大人の緩さを作り出している。

日本で行き詰まって外国へ行く。
安易な選択のようにも思えるけれど、
うまくハマれば単なる逃げじゃなく
心地よく生きるためにアリな選択かもしれない、と思えました。
今までの自分の人生だって計画的なものではなくて
わりと行き当たりばったり、だもんね。
だからこの先、フィンランドに行くこともあるかもしれない。
もしもヘルシンキに行ったら、かもめ食堂を探してしまいそう。
ひょんなきっかけで働き出してしまったりして。



『かもめ食堂』
ヘルシンキの街角にある「かもめ食堂」。
日本人女性のサチエが店主をつとめる
その食堂の看板メニューは、
彼女が心をこめて握る「おにぎり」。
けれどお客といえば、日本おたくの青年トンミひとり。
ある日そこへ、訳あり気な日本人女性、
ミドリとマサコがやってきて…。
普通だけどおかしな人々が織り成す、幸福な物語。

参考:「BOOK」データベース

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コメント
かもめ食堂

本の感想・レビュー記事へのコメント
ここちよいこと。
私は映画を観てから原作を読んだのですが、サチエさんがなぜフィンランドで
かもめ食堂を開くことになったのかなど、映画では謎だった部分が書かれていて
それがとても意外でおもしろかったです。(^^)
日本人は我慢をするのが当たり前という風潮がありますが、
時には自分の人生を心地よくするための大胆な選択も、
あってもいいと思うのです。
2010/05/08(Sat) 21:08 | URL  | 日月 #ffVU29mw[ 編集]
>日月さん
私は映画は見ていませんが、ぜひ見てみたくなりましたよー。
サチエさんの過去などはあまり語られていないのですね。
フィンランドのゆっくりした空気をより楽しめるかな?と思います。
我慢が美徳、という概念が確かに日本にはありますね…
イヤだと思いつつ、自分にも当てはまってしまってます。
自分にとって心地よい環境に身をおくことは
決して“逃げ”ではないのだなあと
『かもめ食堂』を読んだら思えました。
2010/05/09(Sun) 09:16 | URL  | Run #-[ 編集]
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