★5つ。

『ぶらんこ乗り』に続き、いしいしんじさんの本2冊目。
まだ2冊目だけど、いしいしんじさんの描く物語には
なんて優しさが溢れているんだろう、という感想です。

嘘をつく優しさ。
だまされてあげる優しさ。
自分の哀しみを相手には一切見せず、感じさせず、
ただ相手の心を救うこと、喜びとなることだけを願い
自分の身を削ってまでつく嘘と、
知っていてもその嘘をただやわらかく受け止めること。
ほんとうの優しさって、きっとこういうものだ、と思う。

工場からの煙で星が見えない村のプラネタリウムで
生まれ育ったふたごと、ふたごを育てた泣き男。
『プラネタリウムのふたご』では
彼らや村に起こるできごとがゆっくりと描かれています。

こうなればいい…と願っていた結末にはならず、
切なくて仕方がなかった。
それでも、その切なさも苦さも含め、
この世はなんて優しさに満ちているんだろう。
哀しいできごとに出会ってしまった人々の
ほんとうの優しさに圧倒される。

 「ほんものを見る、ってのもな、むろん大切なことだよ」
 泣き男はつづけた。
 「でも、それ以上に大切なのは、それがほんものの星かどうかより、
 たったいま誰かが自分のとなりにいて、
 自分とおなじものを見て喜んでいると、
 こころから信じられることだ。
 そんな相手が、この世にいてくれるってことだよ」

事実か嘘か、なんてどうでもいいことなのかもしれない。
真実がそこにあるのかどうか。
それに心を打たれるか、
その気持ちを分け合える誰かがいるか。

ふたご、泣き男、老女、テオ一座の人々、猟師たち、村人たち…
切なさも苦さも飲み込んでなお自分の足でまっすぐに立ち、
決して折れない強い優しさに溢れた彼らは、
周囲や悲しいできごとに左右されたり折られたりしない
真の幸せを持っているのではないのかな。

人はみな、目には見えない6本目の指をつなぎあっている…
と本の中で語られているように、自分もまた6本目の指で
優しい人たちとつながっている、と信じられる物語です。



『プラネタリウムのふたご』
だまされる才覚がひとにないと、
この世はかさっかさの世界になってしまう-。
星の見えない村のプラネタリウムで拾われ、
彗星にちなんで名付けられたふたご。
ひとりは手品師に、
ひとりは星の語り部になった。
おのおのの運命に従い彼らが果たした役割とは。

参考:「BOOK」データベース

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コメント
プラネタリウムのふたご

本の感想・レビュー記事へのコメント
はじめまして
はじめまして、心優しい物語・・・読んでみたくなりました。私は最近森絵都さんのカラフルを読みました。こちらは家族、友人・・・その他主人公を取り巻く人々の本当の気持ちを描いた良い作品でオススメです。
2010/06/05(Sat) 21:31 | URL  | somesei #-[ 編集]
>someseiさん
初めまして、コメントありがとうございます!
「プラネタリウムのふたご」、優しい気持ちになれる素敵な物語です。
森絵都さん、他の本を読んだことがあり「カラフル」も気になっていました。
今度読んでみます!
よろしければまたお越し下さい♪
2010/06/06(Sun) 12:04 | URL  | Run #-[ 編集]
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