★4つ。

人間の「心」と「体」の間にあるものとして「たましい」が存在する、
と考えることは極めて有効である…と語る河合隼雄さん。
たましいを現すものとして「猫」に焦点を当て、
さまざまな物語に登場する猫について
心理療法家の視点から語っています。

心理学についての教養はほとんど、まったく、無いけれど、
河合隼雄さんと村上春樹さんの対談集
「村上春樹、河合隼雄に会いにいく 」を読んで
河合隼雄さんの話は親しみやすくて納得できる…と感じていました。
その河合隼雄さんと猫が結びついたなら
これが読まずにいられましょうか。

人間に「たましい」が存在するのかどうかは分からない。
けれど、「心」と「体」に人間を分けてしまう合理的な考え方は
人を形づくる大切なものを失ってしまう、という説は分かる気がします。

長靴をはいた猫、空飛び猫、100万回生きたねこ、昔話に登場する化け猫…
かわいかったり怖かったり、神さまだったり化け物だったり、
『猫だましい 』に登場する物語の猫たちは実に多様。
それって実は人間が
自分の「たましい」の多面性を鏡のように映しているのだ。
猫に関連づけて「たましい」について語り、
人が生きていく上でのヒントとなるものを見いだそうとしていく
河合隼雄さんの話は
分かりやすく面白く、また頷けるもの、という感想です。

あとがきによると、河合隼雄さんは
決して猫派ではないんですって(犬派でもないそうですが)。
 
 無関心に近いにもかかわらず、猫の方は私を好きらしく、
 猫を飼っている家に行くと、猫の方から寄ってくることが多い。
 P220あとがきより

構われすぎることが嫌いで静かにしておいてくれる人に寄っていく、
という猫の性質が現れているとともに、
河合隼雄さんは心理療法家として悩みを抱えている人間に対しても
近寄りすぎずにそっと見守ってくれていたんじゃないかなあ、
と思えるエピソード。

 たましいは広大無辺である。
 それがどんなものかわかるはずもない。
 従って、何かにその一部の顕現を見ることによって、
 人間は「生きる」という行為の支えを得ようとする。
 …猫は、どういうわけか、人間にとってたましいの顕現となりやすい。
 猫を愛する人は、猫を通じて、
 その背後に存在するたましいにときに想いを至すといいのだろう。
 P217-218

猫を通して、自分の姿を見ることができるかもしれない。
どんなに怖ろしく描いてもそれを受け入れ、「人間」の姿を見せてくれる。
そんな多様性もまた猫の魅力なんだよなあ、
と「猫を愛する人」としては思うのでした。



『猫だましい 』
猫物語を心理療法家の眼で解読すると、
人間の姿がくっきり見えてくる。
長靴をはいた猫、空飛び猫、
日本の昔話、宮沢賢治の童話…
たくさんの「猫たち」が顕われる、
豊穣なる河合隼雄の世界。

参考:「BOOK」データベース


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コメント
猫だましい

本の感想・レビュー記事へのコメント
こんばんは
河合隼雄さんはたくさんの著書がありますよね。
山暮らしが始まると落ち着いて読んでみたいジャンルなので
いろいろ集めていますが、この本も未読なんです。
読んでこその本ですよね。(汗
紹介を戴いて読む楽しみができました。

近くのスーパーまでは往復二時間の過疎の村なので不便なこと
この上なく、その代わり自然は豊かというわけで。。。
でも図書館と本屋さん無しで暮らせるかどうかというと、
相当ストレスが溜まるでしょうね。
山暮らしの必需品として、仕方なく、いえ、大きな顔をして
本を増やしています。(笑)
2010/11/09(Tue) 17:51 | URL  | けい@野迫川 #PbbxASrw[ 編集]
>けいさん
河合隼雄さんの著書、興味があります!
心理学というと難しく感じるけれど、
分かりやすく書かれていて読んでいて楽しかったです。

山暮らし、憧れがあります…
図書館と本屋さんが無いなら、
自宅を本屋さんにしなければいけませんよね!(笑)
電子書籍も興味があるしネットで本も買えますが、
未読の本をずらっと並べて「どれにしようかな♪」と
選ぶのは実に楽しいですね。
最近の自分にはできていない贅沢なひと時です!

あ、私、生まれも育ちもサッポロで今も在住です。
あずましい、良い言葉ですよね。
2010/11/10(Wed) 00:50 | URL  | Run #-[ 編集]
おはようございます。
Runさんは札幌でしたか。。。
私、十勝は帯広の産なのです。
高校まで北海道でした。
関西に暮らしてもう長いのに、気候には未だに馴染めないでいます。
流れ着いた先が、奈良県の北海道と呼ばれている野迫川村だった
というのも縁なのでしょうね。

でも嬉しいです、札幌だなんて。。。♪
2010/11/10(Wed) 07:02 | URL  | けい@野迫川 #PbbxASrw[ 編集]
>けいさん
帯広のご出身なのですね!
私も道外で暮らしたことがありますが、
気候は最後まで馴染めませんでした…(汗)。
北海道人って体質的には日本人じゃないんだろうなあ、
なんて思った覚えがあります。
野迫川村は奈良の北海道…それは居心地がよいでしょうね!
また野迫川での暮らしを拝見しにブログにお邪魔しますね♪
2010/11/10(Wed) 16:35 | URL  | Run #-[ 編集]
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