★4つ。

江國香織さんの小説は、短編でも長編でも透明感が感じられる。
切なさ、淋しさはたっぷりとあるけれど、
それは氷のように輝いていて、儚くて、
淋しい、と感じながらも眺めていたい気持ちになります。

『つめたいよるに』には、さらさらと読める短編がたくさん。
“さらさら”と言っても話が薄いわけじゃなく、
どれも光景が目の前に浮かんでくるような印象的なものです。
短編は短編としてきちんと完結しつつも、
長いお話の一部のようだな、という感想。
主人公たちの人生の一部を、
ちょうどこの部分でこう切り取れば美しく見える、
という絶妙なところで切り取って
そっと差し出されているようなイメージです。

主人公は小さな子供だったり、お年寄りだったりと様々。
ほとんどのお話が一人称で描かれています。
主人公の年齢や性別で言葉遣いは変わるけれど、
無理に合わせているわけではなく
江國香織さんの目線を1度通してから使われている言葉、という印象。
小さな子がちょっと難しい言葉を使っていたりするけれど
それが不思議と不自然じゃなく、
その状況や心がむしろはっきりと伝わってくる。
何気ない情景が江國香織さんのフィルターを通して濾過されていて、
それこそが氷のような透明感と儚さの所以なのかも。

悲しいようで暖かい「デューク」、
絵本にもなっているちょっとだけ怖くて
でも美しい「桃子」などが特に印象的でした。
なかでもお気に入りは「子供たちの晩餐」。
4人の幼い兄弟姉妹が企む、両親に秘密のとあるできごと。
子供たちのワクワク感、ゾクゾク感が伝わってきて、
「両親にナイショ」というだけでとてつもなくドキドキして楽しかった、
あの気持ちが甦ってきます。

静かにそっと、でも確かに輝いている人生の断片。
さらさらと気持ちよく読めて、でも静かな余韻が残ります。



『つめたいよるに』
デュークが死んだ。
わたしのデュークが死んでしまった―。
犬のデュークが死んだ翌日、
わたしはハンサムな男の子に巡り合った。
出会いと別れの不思議な一日を綴った「デューク」。
デビュー作「桃子」を含む21編を収録した短編集。

参考:「BOOK」/「MARC」データベース


 
関連記事
コメント
つめたいよるに

本の感想・レビュー記事へのコメント
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
つめたいよるに

本の感想・レビュー記事へのトラックバックURL