★4つ。

日常生活からふと異世界へ入り込み、冒険をして、帰ってくる。
その間に少年少女たちは強く成長している…
川上弘美さんの『七夜物語』
子供の頃に憧れた海外の童話を思い出させる、
ロマンチックな雰囲気があるなあ、という感想です。

そんな雰囲気がありながらも、
主人公のさよと仄田(ほのだ)くんが暮らす日常は
少し昔の懐かしい日本だし、
彼らが冒険する「夜の世界」にも
どこか日本的な緩やかさがありました。

曖昧なものは曖昧なまま、謎多きものは謎多きまま、
そういうものだ、それが素敵だ、と受け入れる。
正しいから愛するとは限らないし、嘘だらけでも美しいものは美しい。
いいことも悪いこともごちゃまぜの世界が
私もいいな、と思いながら読みました。

そして、物語の中でさよと仄田くんが直面する問いかけ。
人間のせいで起きた世界の変化、大きな流れに対し、
一人ひとりの私たちに責任は無いのだろうか?
「ある」と答えざるを得ない、
けれど自分はあまりにも無力で何もできない、というもどかしさ。
それでもほんの少しでも何かをすべきなのではないか、
そんな気持ちも単なる偽善なのか…という心の揺れ。
さよと仄田くんが突きつけられた命題に
読んでいるほうも答えがつまる。
共感と、答えの無い問題が心に残る物語でした。

深く心に残るからこそ、
この物語の終わり方は私には少し寂しすぎた。
「それから数年後…」というエンディングは
基本的に好きじゃないかもしれない…。
登場人物たちがどうなったのか、
もう少し想像する余地が欲しいと思ってしまうのです。

「大きな幸福感とかすかな切なさ」と帯にはあったけれど
読み終わった感想は「かすかな幸福感と痛いほどの切なさ」。
さよと仄田くん、彼らが手をつないでいられる時間が
もう少しだけ欲しかった、と思ってしまいました。



『七夜物語』
小学校4年生のさよは、母さんと二人暮らし。
ある日、図書館で出会った
『七夜物語』というふしぎな本にみちびかれ、
同級生の仄田くんと夜の世界へ迷いこんでゆく。
七つの夜をくぐりぬける二人の冒険の行く先は。

参考:「BOOK」データベース
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七夜物語

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