★4つ。

『乱紋』の中心人物は徳川秀忠夫人・おごう。
おごうに仕える侍女おちかの目線で描かれています。
不思議なほど感情を表さないおごうに対し、
おちかは現代に生きてもそう違和感はない感覚の持ち主。
彼女と一緒に「おごうは一体何を考えているの?」と
不思議になってしまいます。

けれど、壮絶な運命に翻弄される彼女が
何も感じていないわけは無いわけで。

2度目の夫が戦死した時、おちかに言った言葉が
珍しくおごうの感情を表しています。

「私の側にいた方、私をいとしんでくださった方は、みないっておしまいになります」

永井路子さんは付記で
「水が器の形に従いながらも、したたかに存在しつづけるように、
彼女はしぜんに彼女なりの生き方を選びとっていたのではないか」
と語っています。
永井路子さんが描いたおごうは、
すべてを受け入れて生きていく静かな強さを持った女性です。

また永井路子さんは、2人の姉を自己主張の激しい女性として描き
おごうとの違いについて
「戦国時代まで、女性は財産権と、それに裏づけられた発言力を持っていた。
…が、家康の時代になると、急速に女は権利を制約され、
みるみるもの言わぬ存在に変わってしまう。
その象徴的な存在がおごうではないのか。
いわば女性史の分水嶺を越えたところに、彼女は佇んでいるのだ。」
と語っています。
永井路子さん独特の女性の側に立った視線で、
日本の女性が背負った運命の1つの形が浮かび上がってきます。

プライドが高く決して頭を下げないお茶々、
一見卑屈に見えようとも願望のために上手く立ち回って周りを利用するお初、
感情が無いと思えるまでに淡々と全てを受け入れて生きていくおごう。
本当に強いのは一体誰なのか。
「もの言わぬ存在」だった女性の姿を浮かび上がらせて
現代に生きる我々にも感銘を与えてくれる1冊です。



『乱紋』
織田信長の妹・お市の方には3人の娘がいた。
長女お茶々は豊臣秀吉に嫁ぎ、
秀頼を産み淀君と呼ばれる。
次女お初はかつての名門・京極家に嫁ぎ、
再興させようと立ち回る。
そして三女おごうは過酷な運命の果て、
徳川二代将軍秀忠夫人に…。
戦国の歴史を左右した華麗な系譜を描いた大作。

参考:「BOOK」データベース

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コメント
乱紋

本の感想・レビュー記事へのコメント
No title
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応援ポチ ('∇')
2008/11/23(Sun) 14:50 | URL  | poo #-[ 編集]
>pooさん
応援ありがとうございますっ♪
2008/11/24(Mon) 14:19 | URL  | Run #-[ 編集]
この感想文をコピーして永井路子さんに読んで貰おうと思いますがよろしいですか?
2010/02/05(Fri) 21:17 | URL  | ぱ #-[ 編集]
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2010/02/11(Thu) 17:30 |   |  #[ 編集]
>鍵コメさん
間違いのご指摘、ありがとうございました。
修正しました。
2010/02/11(Thu) 18:34 | URL  | Run #-[ 編集]
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