続巷説百物語(ぞくこうせつひゃくものがたり)

★4つ。

6つの短編から成る『続巷説百物語』。
前作『巷説百物語』の事件とは
時間的に前後しており、続きというよりも
“ある大仕掛け”へ向かっていく事件だけが語られています。

『巷説百物語』の感想では
犯人の心情にあまり触れていないのが物足りない、
と書きました。
でも『続巷説百物語』では、語り手である山岡百介と
彼の目から見た御行又市一味の心が察せられます。
犯人の心の闇を掘り下げていく京極堂シリーズ、
事件を解決していく側の心に触れる巷説百物語シリーズ、
ちがった味わいがあるのだなと感じました。

短編1つ1つは独立しているものの
巧みな伏線により、すべてが“大仕掛け”へとつながっていく。
その見事な伏線の引き方、さすがは京極夏彦さん。
話が進むに連れ少しずつ引き込まれ、
5番目の短編「死神或いは七人みさき」では
話の中にすっかり飲み込まれてしまいました。
“死神”が本当に怖く、おぞましい。

百介は生を受けた武家にも、育った商家にもなじみ切れず、
かと言って闇の世界で生きることもできず、
昼と夜の世界の両方に憧れる、黄昏時にいる人物。
対極のものに等しく魅かれるその気持ち、
なんだか少し分かる気がします。

だから最後の短編「老人の火」では本当に悲しくなってしまった。
「昼も夜も関係ない」と強く願った百介の思い、
そしてきっと百介を大切に思っているであろう又市たちの思い、
それぞれが切ない。
同じ人間であるのに、
生きる世界がちがうとはこういうことなのか…
と、痛いほどの悲しさが残ります。

事件を収束させる又市たちの
見事な手際を楽しめた『巷説百物語』とちがい、
切なく、重く、そして魅かれる物語でした。

次は百介の老後が描かれている『後巷説百物語』。
百介は結局、念願の物語を書いたのだろうか?



『続巷説百物語(ぞくこうせつひゃくものがたり)』
諸国を巡り怪談話を蒐集する
山岡百介が出会った御行の又市一味。
闇に生きる彼らにしか終わらせることができない、
愚かで哀しい人間の悪業。
打ち首にしても生き返る悪党、
行き合う者は命を落とすという七人みさき-。
奇想と哀切のあやかし絵巻、第2弾。

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巷説百物語(こうせつひゃくものがたり)

★3つ。

京極堂シリーズを読み終わり、
京極夏彦さんの別のシリーズを読み始めました。
巷説百物語シリーズ、
やはり“妖怪”がたくさん出てきます。

同じく“妖怪”が登場しても、
巷説百物語シリーズは京極夏彦さんいわく
「京極堂シリーズの裏返し」。
人の心にあるどろどろとしたものに
妖怪の名を付けて祓い落とし、事件を解決する京極堂シリーズ。
対して巷説百物語シリーズは、どうにもならない事件を
妖怪の仕業にしてしまうことで決着を着けるもの。

巷説百物語シリーズの犯人は、
心に巣食う妖怪を祓うことができなかった人々。
妖怪を祓って真相が明るみに出たとしても、
誰も幸せになれないところまでこじれてしまった事件ばかり。
だからこそ、真相は曖昧なままに
残った人々に“妖怪の仕業”と思わせて
事件の傷を癒す御行一味が必要なのかもしれない。

どちらが好みかと言うと、
今のところ京極堂シリーズのほう。
「なぜこんなことをしてしまったのか」という
犯人の心を知りたく思うので、
それにはあまり触れていず、
触れていても短編なこともあって
あまり納得できなく感じてしまう
巷説百物語は少し物足りなく思ってしまった。

それでも、事件を妖怪の仕業にしてしまう
御行一味の手際は実に見事。
キャラの特徴もシリーズを追うごとに
どんどん際立っていくような予感。
続きにやっぱり期待してしまいます。



『巷説百物語(こうせつひゃくものがたり)』
怪異譚を蒐集する山岡百介は、
雨宿りに寄った山小屋で
不思議な者たちと出会う。
御行姿の男、垢抜けた女、初老の商人、
そして、なにやら顔色の悪い僧-。
闇に葬られる事件の決着を
金で請け負う御行一味。
彼らが操るあやかしの姿は、
人間の深き業への裁きか、弔いか-。

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邪魅の雫(じゃみのしずく)

★4つ。

久しぶりの京極堂シリーズ本編。
今回はある意味、“榎木津の事件”。
出番自体は少ないけれど、
“らしくない”姿に榎木津の苦しみを感じて切ない。

『姑獲鳥(うぶめ)の夏』『魍魎の匣(もうりょうのはこ)』のような
奇妙さや不気味な美しさは、薄れてきている気がします。
“憑き物落とし”も、単に真相を明かしたような印象。
その場にいる全員から憑き物が落ちる、
まるで自分からも憑き物が落とされたように感じられる、
あの強烈なインパクトが感じられなかったのは残念。

それでも、読み終わった感想は「あー、面白かった。」でした。
登場人物への愛着があって、
榎木津や関口の意外な姿や
青木や益田の今まで知らなかった内面が
見られるのがうれしいのです。
複雑な事件がスッとまとまる緻密な構成も好きな理由。

そしてやっぱり、
犯罪を犯してしまう人間の悲しさ、暗さに惹かれてしまう。

自分にとっては自分が世界の中心だけど、
世界にとっては自分は一粒の砂に過ぎない。
一粒の砂に過ぎない自分は、
たった一滴の邪悪な雫に吸い込まれてしまうこともある…。
人間の弱さをつくづく感じ、ほんの些細なきっかけで
償いきれない過ちを犯してしまう怖ろしさにぞっとしました。

『邪魅の雫(じゃみのしずく)』を最初に読んだなら
(登場人物の設定が分からない、という点を除いても)
ファンにはなってないかもしれない、
でもここまで京極堂シリーズを読んだならやっぱり読みたい、
そんな1冊。

『邪魅の雫(じゃみのしずく)』で、今のところ出版されている
京極堂シリーズは読み終わってしまった…。寂しい。
次回作『鵼の碑(ぬえのいしぶみ)』、
いつ出てくれるか楽しみです。



『邪魅の雫(じゃみのしずく)』
「殺してやろう」「死のうかな」「殺したよ」
「殺されて仕舞いました」「俺は人殺しなんだ」
「死んだのか」「-自首してください」
「死ねばお終いなのだ」
「ひとごろしは報いを受けねばならない」
昭和28年夏。江戸川、大磯、平塚と
次々に現われる毒殺死体。
警察も手を拱く中、あの男が登場する!
「邪なことをすると-死ぬよ」

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百器徒然袋―風(ひゃっきつれづれぶくろ かぜ)

★4つ。

京極堂シリーズの番外編、榎木津礼二郎が主人公の第2弾。
探偵・榎木津、相も変わらず傍若無人で破天荒で、痛快です。

前作『百器徒然袋―雨』からの語り手である「僕」。
ようやく「本島」という名前が判明したけど、
扱いはやっぱりひどいもの。
つい榎木津に関わっては振り回されてしまう本島は
やっぱりちょっとヘンな人で、
悲惨な目に合っていても笑えてしまう。

短編集ですがそれぞれが関連しています。
化け猫がモチーフとして使われていて
榎木津のにゃんこ好きがよく分かる、
猫飼いとしてはそれだけで親近感が湧いてしまう。
(たとえ化けても猫は憎めない猫ばか。)

京極堂シリーズ本編で登場した人物や『今昔続百鬼 雲』の沼上、
知っている人がちょこちょこと登場してくるのがうれしい。
(沼上は『今昔続百鬼 雲』の時よりキャラが立っている!)
そして敵として現われる、やはり見知った癖のある人物。
あの人を敵に回して大丈夫なの?
とちょっとドキドキしてしまったけど、
天下無敵の榎木津礼二郎が負けるわけはないのだ。

罠にかけられた榎木津の下僕たち、
彼らがどうなろうとまったく気にしていないような榎木津や京極堂。
読んでいる途中の感想は、彼らがあまりにも冷たいような。

けれど、最後は暖かい気持ちになれます。
榎木津の知らなかった一面に心が動かされる。
京極堂が最後にぽつりと言う一言、
それを聞いて本島が思ったことがじわりと沁みます。
ようやく本当に榎木津一味になれたみたいで、
よかったね、本島…ってますますひどい目に合うのだろうけど。



『百器徒然袋―風(ひゃっきつれづれぶくろ かぜ)』
調査も捜査も推理もしない。ただ真相あるのみ!

眉目秀麗、腕力最強、
天下無敵の薔薇十字探偵・
榎木津礼二郎が関わる事件は、
必ず即解決するという。
探偵を陥れようと、「下僕」の本島らに仕掛けられた
巧妙な罠。
榎木津は完全粉砕できるのか?

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今昔続百鬼 雲 〈多々良先生行状記〉(こんじゃくぞくひゃっき くも)

★2つ。

京極堂シリーズに登場する、
多々良先生を主人公としたサブストーリー。
妖怪研究のため、日本全国飛び回る多々良先生は
書斎派でなかなか腰を上げない京極堂と対照的な人物。
妖怪のことしか考えてない常識知らずのセンセイと、
多少は常識派だけどやっぱり妖怪好きの沼上のコンビが
行く先々でおかしな事件に巻き込まれます。

事件の中で、天才絵師・鳥山石燕が描いた
妖怪画の謎に迫っていきます。
だから主人公は妖怪馬鹿の多々良先生しか考えられない…
とは思うのですが、癖のある人物がたくさん登場する本編の中で
多々良先生はあんまり印象強くなかったのだよなあ…。
主人公となっているこの本を読んでも、
変人ではあるけれど正直あんまり惹かれない人物。
語り手の沼上も、「妖怪好き」以外にあまり特徴が無いような。
事件があっさりと解決してしまうのは
『百器徒然袋―雨』でも同じだけど、
あちらの主人公・榎木津はインパクトが強烈だし。

2人が妖怪研究のために訪ねた地方で、
戦後すぐの時代に日本が抱えていた「近代化」という問題が
浮き彫りにされているのは興味深かった。
けれど、どうにも物足りなさを感じてしまう。
“黒衣の男”京極堂が登場する最終話なんて、
もっともっと深い人間の感情がありそうなのに…とちょっと残念。

多々良先生と沼上のやり取りはユーモラスで笑えるけれど、
京極堂シリーズとして読むとちょっと違うな、と感じてしまいました。



『今昔続百鬼 雲 〈多々良先生行状記〉
(こんじゃくぞくひゃっき くも)』

河童に噛み殺された男。神隠しに遭う即身仏-
はたしてそれらは妖怪の仕業なのか?
断言するのは全身妖怪研究家・
多々良勝五郎大先生!
戦後まもなく各地で発生する怪事件に
次々巻き込まれる妖怪馬鹿コンビの大冒険!

参考:出版社/著者からの内容紹介

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百器徒然袋―雨(ひゃっきつれづれぶくろ あめ)

★3つ。

優秀な学歴、由緒ある家柄、誰もが見惚れる美貌。
それらを補ってあまりある傍若無人っぷりと不可解な能力で、
京極堂シリーズの中でも殊に強烈なインパクトを放つ
榎木津礼二郎が大暴れする短編集。

人間の悲しい暗さが全面的に描かれている本編とは違い、
むちゃくちゃな榎木津と振り回される「下僕」たちが笑いを誘う。
そしてめちゃくちゃやっているのに悪は滅びて善(つまり榎木津)が栄える、
ちょっとひねくれた勧善懲悪が痛快に感じます。

京極堂が嫌々引っ張り出されている風情を装いながらも
ノリノリのように思えるところも面白い。
意外と京極堂も悪ノリするのねー、って新鮮でした。
「憑き物落とし」をしたらしい箇所もあるけど
はっきり書かれていないので、
何があったんだろうと想像するのも本編とは違った楽しみ方。
実はこの描かれてない箇所に
どろどろとした人間の情念が存在しているのだろうなあ。

この本で初めて登場した語り手、「僕」がヘンな人物。
誰からも本名を呼んでもらえず、
理由が分からないまま榎木津に従ってしまう。
関口のことを「ああはなりたくない」と言っているけど、
榎木津も京極堂も、関口に対しては友情も感じられないことは無い。
自分のほうがよっぽど振り回されているんじゃ?
その悲惨さがよけいに笑いを誘って、
関口が語り手の時とはやっぱり違う印象です。

とにかく榎木津が大活躍?の
『百器徒然袋―雨(ひゃっきつれづれぶくろ あめ)』。
京極堂シリーズ本編とはずいぶん違うけど、
軽くて笑える雰囲気で面白かった。
榎木津礼二郎ファンなら文句なしに楽しめます。



『百器徒然袋―雨(ひゃっきつれづれぶくろ あめ)』
「推理はしないんです。彼は」。
知人・大河内の奇妙な言葉にひかれて
薔薇十字探偵社を訪れた「僕」。
気がつけば依頼人の自分まで
「名探偵」榎木津礼二郎の
「下僕」となっていた…。
京極堂をも巻き込んで展開する
ハチャメチャな妖怪3篇。

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ベーグル焼いたり、本読んだり。

備忘録といいますか、
読後に自分の中に湧く気持ちを言葉にして、
ついでにブログにしてみました。

ベーグル焼いて売るのがお仕事。

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